平成28年12月議会 討論

会派を代表し、平成27年度決算認定に反対の立場から討論いたします。

平成27年度一般会計決算は歳入1兆6810億円、歳出1兆6724億円で実質収支は14億円の黒字。財政の健全化判断指標はいずれも危険水域にはありませんが、社会保障関係費が前年度と比べ186億円も増えているにもかかわらず臨時財政対策債を含む実質的な普通交付税は前年度比マイナス10.4%、344億円も減額となっているなど、財源確保は厳しい状況です。27年度末の県債残高は3兆4281億円と増加の一途をたどり、将来負担の軽減、財政健全化の方向性が見られないのは大きな問題です。

以下、不認定の理由を3点、申し述べます。

 

その第一は、県民の命や暮らしを守るうえでの根幹の政策である医療、福祉への取り組み姿勢や予算配分が乏しい点についてです。

特に地域医療の充実は、高齢化が急速に進む千葉県にとっては最重要課題であり、県が主導的な役割を果たすべきです。にもかかわらず、地域医療の後退を県自らが進めている問題があります。東千葉メディカルセンターの赤字損失16億5600万円を受け、県は27年度に追加補助も含めて13億8千万円を支出。地域医療の拠点だった県立東金病院を廃止し、地域医療から手を引きましたが、後医療を担うはずの同センターを機能させることができず、今後の見通しも立っていません。

また、県立病院の役割を高度専門医療に特化する方針を改めず、地域医療の拠点である佐原病院、循環器病センターに対して十分な支援が行われていません。特に災害拠点病院でもある佐原病院本館の耐震改修は先送りされたままで、その他の病院でも老朽化、狭隘化への対応が遅れています。県民の命と健康を守る医療現場に十分な予算が振り向けられていません。

福祉についても、社会問題になっている子どもの貧困に対する取り組み姿勢があまりにも消極的です。昨年、県では子どもの貧困対策推進計画を策定しましたが、従来からの施策を羅列いただけで、県の独自策や予算拡充もほとんど見当たりません。児童虐待相談対応件数が6千件を超え、児童相談所一時保護所もパンク寸前にもかかわらず、子どもたちが過ごす施設の改修や環境改善に27年度も必要かつ十分な予算がつけられませんでした。特に厳しい環境におかれた子どもへの支援が必要ですが、児童養護施設退所時における県独自の支援は、就職する場合のみ2万5千円の支度金だけと他県と比べてあまりにも少なすぎます。また、定時制高校における夜間給食についても、事実上の廃止対象を5校に拡大。廃止後の厳しい生徒たちの実情にしっかりと目を向け、法の趣旨に基づき定時制教育の要である給食を実施すべきです。

 

第二に、国の直轄事業である八ッ場ダム、圏央道、外環道、北千葉道路といった不要不急の大型公共事業を国の言うなりに推進し、将来世代に巨額の借金を積み増している問題についてです。

八ッ場ダムや霞ケ浦導水等、新規水源開発にかかわる県内利水者の負担金総額は27年度まで約400億円、28年度以降約151億円、合計551億円に起債利息を加えると800億円以上と予想されます。県水道局上水道事業の質疑では、現時点で十分な保有水源を持ち水余り、5年後の給水人口は2万人程度の増加にもかかわらず、八ッ場ダムにより41万人分の水量を新たに確保する、ダムありきの過大な水需要予測の問題点が明らかになりました。これに加え、県内の水道事業体では使われていない水利権、いわゆる未利用水利の取得費用、管理負担金が27年度までに総額533億円以上の税金を投入。
その一方、県水道局の上水道だけでも施設の更新・耐震化及び維持管理に今後5年間で2600億円以上の事業費が必要とされており、他の水道施設においても長寿命化を進めるための資金需要は莫大になります。今からでも遅くありません。県が水利権の総合調整を図ることで必要のない水利権を返上し、無駄なダム事業から撤退すべきです。

外環道、圏央道、北千葉道路の直轄事業負担金の27年度までの累計総額は2790億円。費用便益比B/Cは、外環道及び北千葉道路直轄区間でそれぞれ1.2と事業推進の根拠1.0をわずかにクリアしているだけです。一方、県民生活の安全・安心につながる橋梁の緊急架け換え、耐震化事業も完了しておらず、長寿命化修繕が必要な458橋のうち114橋しか完了していません。今後、流域下水道を含めてインフラ施設の更新、長寿命化にかかわる資金需要は増加の一途であり、限られた財源は県民生活に直結する公共事業にこそ優先投入すべきです。従来型の公共事業からの転換、抜本的な見直しを求めます。

 

最後に、公務労働のあり方についてです。

27年度知事部局における非正規職員の数は1265名で14.8%。正規から非正規への置き換えが進み、正規職員は、5年前と比べて402名減少、非常勤職員は185名増加。人件費を見ると、正規職員で約25億円減、嘱託職員で約4億円の増となっています。県の公務労働の現場は、嘱託職員、日々雇用、任期付き 職員、業務委託等々、さまざまな働き手により成り立っています。特に業務委託では落札率70%ぎりぎり上回る受注や現場従業員の賃金は最低賃金すれすれのケースも見られますが、県は法的に問題がない、民民の雇用契約なので関知しないとのスタンス。官製ワーキングプアの認識に欠けていると言わざるをえません。とりわけ県の雇用労働政策の拠点であるジョブカフェ、ジョブサポートセンター事業を担う嘱託職員が1年限りの細切れ不安定雇用を強いられており、契約方法の見直しが必要です。同一労働・同一賃金への対応についても、国の動向を見て検討するとのことですが、千葉県として公務労働のあり方を検証するなかで早急に対応すべきです。

以上の理由から、27年度決算については不認定とし、討論を終わります。