平成30年9月議会 議案・請願の討論原稿

市民ネット・社民・無所属の入江晶子です。会派を代表し、議案第9号、請願第98号、請願第99号及び請願第90号について、委員長報告に反対の立場から討論します。

初めに、議案第9号職員の特殊勤務手当に関する条例の一部改正の条例制定についてです。

公立学校教員の給与等については、昭和46年制定の「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」いわゆる給特法で定められ、教育職員には時間外勤務手当及び休日勤務手当は支給することはできません。その代わりに法制定当時の教員の平均的な1週間の超過勤務時間であった1時間48分を根拠に、給与月額の4%に相当する教職調整額を支給するとしています。しかし、現在の学校現場における教員の勤務実態はどうでしょうか。

今年6月、千葉県教育員会が行った実態調査では、過労死ライン越え月間残業時間80時間が中学校教員で36.4%、高校教員が30.2%という結果。県教委は9月に「学校における働き方改革推進プラン」を策定しましたが、勤務時間管理の根幹をなす「給特法」の議論が抜け落ちたままです。本議案は、部活動指導に対する教員の負担を考慮するとしていますが、時間外手当は出せないので、特殊勤務としてわずかな手当の増額を行うものです。休日の部活動指導を2時間以上4時間未満行った場合は1800円、6時間以上行った場合の手当は3,600円。それぞれ時給換算しても千葉県の最低賃金の895円に遠く及びません。教職員の働き方改革を進めるためには、「給特法」の抜本的見直しが必要であり、本議案には賛成できません。

次に請願第98号定時制高校の給食再開及び夕食費補助の拡充を求めることについてです。

今年4月から県立定時制高校全17校で夜間給食が廃止されました。27年度からの「試行的廃止」に始まり、この3年間の調査結果報告を素直に読み取れば、定時制給食が果たしてきた役割、教育的意義は明らかなはずです。昨年度の県教委の調査でも、給食実施の12校における喫食率は6割から8割と高く(佐原高校91%、佐倉東高校81%、市川工業72%)、昨年5月1日の文科省調べでも、千葉県の喫食率は平均66%と他県より高い状況です。また、経済的困窮を抱える生徒も多く、夜間定時制生徒の就労率は全国平均42%に対し、千葉県では51%となっています。しかし、県はこれらの実態に目を背け、定時制教育の要である給食廃止を強行したのです。

この3年間に何度も定時制高校を訪ね、夜間給食が廃止される前後の現場の状況を見てきました。今年5月に訪問した市川工業高校の食堂の光景は、衝撃的でした。昨年は100人以上の生徒が温かな給食を囲み賑やかに食べていましたが、夕食に変わった今年はわずか4人の生徒が広い食堂にぽつりぽつりと座り、コンビニ弁当を食べていました。夕食は給食とは全く違います。給食が果たしていたコミュニケーションの場、生きた食育の場、そのどれをも代替することはできません。全国で給食未実施は本県を含めわずか7県だけ、他の40都道府県は法律に基づき、財政状況に関わらず給食実施に努めています。給食再開を求める立場から、本請願は採択すべきです。

請願第99号鴨川市池田地区における巨大太陽光発電所建設計画に関することについてです。

鴨川有料道路に西側に広がる広葉樹の森、山肌に無数の深い谷を刻む急峻な山林に日本最大規模のメガソーラー発電所建設計画が進められています。太陽光パネル約47万枚、出力130メガワット。事業用地面積250ヘクタール、10万本以上ともいわれる樹木を伐採し、山の高さを60メートルも削り取り、その削った土で最大80メートルもの深さの谷を埋め立てる計画です。「このままでは鴨川は前例のない大規模山林破壊とそれがもたらす土砂災害や水害の壮絶な実験場になってしまう」地元の漁業・農業、観光業に携わる住民、市民が立ち上がり、計画中止を求める署名は8500筆を超えています。

太陽光発電所については法的規制が不十分で、国もようやく環境影響評価の対象にすることを検討している段階。千葉県の林地開発許可審査基準においても対象除外のため、乱開発を許すものとなっています。

今年2月28日、事業者である「AS鴨川ソーラーパワー合同会社」は千葉県に林地開発許可申請を出し、現在審査中ですが、今に至るまで事業体の構成や責任の所在、資金計画や事業遂行能力等、その実態は分かっていません。

とりわけ集中豪雨が頻発する昨今、建設予定地で1300万㎥もの土砂移動により、大規模土砂災害が起きるのではないかと地元住民の不安は高まるばかりです。

また、林地開発許可の審査に当たり、事業区域内に分布する中近世の石仏群や建物跡など歴史文化遺産の調査の必要性も専門家から指摘されています。文化財保護の観点からも、鴨川市や事業者に対する県の指導・助言するよう求めます。本請願は採択すべきです。

最後に継続審査となっている請願第90号新井総合株式会社君津環境整備センターの安全に関することについてです。

君津市の山奥、小櫃川の支流御腹川の源流域に新井総合施設株式会社の産廃最終処分場があります。ここから始まる流れが君津や市原、千葉など35万人の水道水源や農業用水となり、浸透した地下水が平成の名水百選・久留里の上総掘り自噴井戸の水源となっています。

平成16年に第1期処分場への搬入が開始され、24年には保有水漏れが発覚、現在も搬入を停止中です。その根本的解決がなされないまま第2期処分場が許可され、今回新たに第3期処分場223万㎥の増設を申請。埋立量の合計は、421万㎥と日本最大規模になります。これまで地元君津市議会や君津市も地下水や河川の汚染を強く懸念してきました。

本請願は、今年6月定例議会に出され、「審議会での専門家の意見を踏まえ第三期増設事業が久留里・小櫃地区の表流水・地下水・環境にどのような影響を与えるのか、県同席のもと事業者に説明するよう指導してほしい」と訴えています。ところが、県はこれら請願者の求めを拒否、また請願が継続審査中にもかかわらず、あろうことか8月6日唐突に第3期増設の許可を出しました。先の常任委員会での県の答弁は「申請内容は法令上の基準を全て満たしているので許可した」の一点張り。事前協議を放棄して本申請を行った事業者に許可を出すなど言語道断です。

県は、昨年君津市議会・千葉県議会において全会一致で可決されたボーリング調査の実施を指導せず、環境影響評価、アセスの段階での専門家の見解を恣意的に歪めました。つまり「地層が違っても地下水はまじりあい、処分場から漏れたら上総掘り井戸は汚染される。また川が汚染されたら地下水も汚染される」との専門家の指摘に対し、県は「だからボーリングしても意味がない、漏れたら井戸が汚染するから漏らさない処分場にするから安心」とすり替えたのです。これが環境行政のあるべき姿でしょうか。安全な水を飲む当たり前の住民の権利を脅かす由々しき事態と言わざるをえません。第三期増設許可の撤回を求めます。最後に、県民の命と健康を守る県議会の立場から、本請願の全会一致による速やかな採択を求め、討論を終わります。