八ッ場ダムは中止せよ

12月21日(水)

昨日は県議会の閉会日。
今回、私は発議案の討論を担当した。
社会保障・税の共通番号制の拙速な導入に反対する意見書と
八ッ場ダム建設事業の中止を求める意見書の2本を取り上げた。

来年度予算編成に間に合うように八ッ場ダムの結論を出すということで
民主党内でも反対派の議員が最後のふんばりをみせ、
今日は前原政調会長が官房長官に申し入れをした。
夜のテレビ報道では明日にも国交大臣サイドで決着がつけられるとか。

それにしても今の今まで民主党は何をやっていたのか、という思いが強い。
ダム検証は政権交代後から今秋に結論が出されるまで行われており、
検証ルールをつくった有識者会議も官僚のシナリオ道理に進められ、
「予断なき検証」どころか、ダムありきのアリバイづくりの茶番劇だと
100名を超える科学者も声明を出し、私たち市民団体もこれまで
さんざん民主党に働きかけてきた。
しかし、私たちの思いと同じく民主党内でダム中止と現地の生活再建支援
のための法案づくりに汗をかいてがんばってくれたのは
大河原さん、川内さん、初鹿さんなど、ほんの一握りの民主党議員だった。

前原氏の後、次々と国交大臣が変わったとはいえ、官僚の用意周到な作戦
にやられ、「政治主導」が思ったより難しかったではすまされない。
大震災の経験を踏まえ、八ッ場ダムを象徴とする公共事業はこれから
どうあるべきかを真摯に考え、正面から問題に向き合う気持ちが一人ひとりの
議員になかったと言わざるを得ない。
だからパフォーマンスだけの議員は信頼に値しないし、
自分自身はそうはならない。

写真は、11月末に議員会館5階から撮った国会議事堂。
銀杏の紅葉が見事だった。
国会議事堂

12月議会を控え、連日忙しいところを1都5県議会議員と市民団体のメンバーで
議員会館を上り下りしながらロビー活動をし、緊急院内集会も開いた。
群馬の角倉県議が議連の会長として持ち前の行動力と国会の人脈を駆使し、
この4か月間、さまざまな行動をけん引してくれた。
私も事務局長として、文書作成や連絡調整など縁の下の役割を引き受けてきた。
たとえダム建設続行となっても、この有害無益なダムが中止となるまで
活動を終わらせることはできない。
その思いで、昨日は本会議の討論に立った。
県議会は10分の時間制限がある。
以下、少々長いですが、討論の内容です。
    ↓
市民ネット・社民・無所属の入江晶子です。会派を代表し、発議案第25号
及び27号について、賛成の立場から討論いたします。
初めに、発議案第25号「社会保障・税の共通番号制」の拙速な導入に
反対する意見書についてです。2011年1月、政府は「社会保障・税に係る
番号制度についての基本方針」を発表し国民一人ひとりに新たな共通番号を
振り、共通ICカードを持たせ、2015年1月からの利用開始を決定しました。
税金、公的年金、健康保険、介護保険をはじめとするあらゆる個人情報を
国家が一元的に管理することになりますが、さまざまな問題点があります。
まず第一に、国家が国民一人ひとりの幅広い個人情報をプロファイルし、
データ監視することは個人のプライバシーや人権を侵害する危険性が高いこと、
第二に将来の社会保障と税のあり方についての本質的な議論がないままに、
手段としての共通番号制やIT化だけが進められ、6000億円という巨額の投資が
見込まれていること、第三に個人情報漏えいのリスクやなりすまし犯罪等への
対策が不十分であること等々、枚挙にいとまがありません。
何よりも共通番号制に関する国民への情報提供も不十分であり、
本意見書案に賛成するものです。

次に発議案第27号「八ッ場ダム建設事業の中止を求める意見書」についてです。
2009年の選挙で民主党は「コンクリートから人へ」「八ッ場ダム中止」を公約の
柱に掲げ、政権交代を実現しました。
前原国交大臣の中止宣言を受け、八ッ場ダム中止と地元住民の生活再建を
同時に求め20年来活動してきた私たちは公共事業のあり方に一石が投じられると
民主党の政策転換に大いに期待しました。
その後、国交大臣が次々と変わるなか、前原大臣の「予断なき検証」という
言葉だけは引き継がれましたが、政治主導による抜本的な見直しは
行われませんでした。客観的な検証を担保するはずだった有識者会議も事務局
である国交省河川計画課の人選でダム懐疑派の学識者を排除、官僚のシナリオ
どおりに非公開の会議を重ね、結果的にダム推進に有利な検証ルールが
つくられてしまいました。このルールに基づき八ッ場ダム検証が行われました
が、利水面では水余りの実情を無視、過大な水需要予測をベースとし、
治水面では科学的根拠なくダムの治水効果を2.6倍に引き上げました。
費用対効果についても利根川本川で60年間破堤はなく被害額はゼロにも
かかわらず、八ッ場ダムがないと毎年4820億円の洪水被害が出ると
検証しています。その一方でダム湖周辺の地滑りや代替地の崩落等への対策は
議論されていません。検討の場に参加した関係6都県は国交省が示した
工期延長や事業費増額に対して認められないとする一方で、
ダム推進を大合唱し、「八ッ場ダムが最も有利」とする検証結果となったのです。
その後のパブリックコメントでは全体意見の96%にあたる5739件が同一文書の
コピーに署名だけであることが分かり、ダム推進派の埼玉県議によるやらせ問題
が発覚しました。科学的客観的事実に目をそむけ、ダム建設ありきの結論を
出したのは、いったい誰のためでしょうか。ダム利権につながる企業や政治家、
或いは天下り先を温存したい官僚のためなのか。
少なくとも私たち流域住民のためではないことは明らかです。

国会では今まさに八ッ場ダム推進派と反対派の攻防が繰り広げられ、
今週半ばにも政府民主党は結論を出すと報じられています。
私たち1都5県議会議員の会メンバーもかねてからダム中止と地元の
生活再建支援法案制定を求め、超党派でロビー活動を続けてきました。
その上で敢えて申し上げますが、政府民主党におかれましては、
自ら掲げた選挙公約の看板を簡単に取り外すことがあれば、
再び民意が問われることを重く受け止めていただきたい。
もとより八ッ場ダムは必要性がないばかりか災害を誘発する危険性も
指摘されており、国も地方も巨額の税投入を行う余裕などないはずです。
千葉県の建設負担金は昨年度までで427億円にのぼります。
建設続行となれば、さらなる事業費の増加や工期延長に伴う基本計画の変更は
避けられません。現在の総事業費は4600億円ですが、起債利息も含め、
総額1兆円に上るとも試算されています。東日本大震災と原発事故の経験を踏まえ
、私たちは従来の公共事業のあり方や価値観を見直す岐路に立たされています。
これまではダム建設によって遠くの自然環境やそこに暮らす人々の生活・
地域コミュニティを破壊し、水資源を確保してきました。
しかし、これからはダムに頼らない治水政策への転換が求められており、
世界の潮流は水循環の健全化、ダム撤去の時代です。
日本においてもダム建設を前提にした不合理な水利権許可行政を改革し、
暫定水利権の解消や水利権の転用こそ進めるべきです。
実際、国の直轄ダムであった徳島の細川内ダムは2000年に中止、
新潟の清津川ダムは2002年に中止となりましたが、その後も暫定水利権の
許可は継続され、現在も使用されています。
八ッ場ダム中止の場合も実際に使用されている暫定水利権が消失することはない
という事実を踏まえ、建設負担金の返還問題も含め、関係6都県で現実的な対応を
議論すべきです。仮にダムが完成してもその寿命は短く、砂が貯まる堆砂問題
など維持管理費や撤去費用に多額の税金を投じなければなりません。
これからは既存施設の維持管理費が嵩み、新たな社会資本整備に
予算措置する余裕もありません。
加えて災害復旧復興のために新たな財源も必要とされているところです。
以上のことから、政府において八ッ場ダム建設事業の速やかな中止と関係住民の
生活支援法案の早期成立を求め、本意見書案に賛成いたします。

                                             以 上