札幌視察(最終日)

札幌視察最終日の11日、地下鉄東豊線に乗り、早朝9時に東区栄町ファミリー
クリニックにある医療法人「北海道家庭医療学センター」を訪ねました。

現地に到着すると、朝早くから待合室は患者さんでいっぱいでした。
2階に案内され、理事長の草場鉄周(くさばてっしゅう)医師がにこやかに
応対してくださいました。
草場先生

こちらのセンターは96年の創設以来、北海道内で都市型と地域型の医療を
担うとともに研修を通じて多くの「家庭医」を輩出している家庭医療の
パイオニアです。
前理事長がカナダで家庭医の重要性を感じ、室蘭で小さな診療所を開設後、
家庭医をいかに育てるかを模索しながら、研修制度をつくったのが始まり
だそうです。

草場先生ご自身は、こちらのセンターの3期生とのことで、福岡がご出身。
もともと脳科学に関心があり、京大を卒業され、心と身体をトータルに診る
ことができるプライマリーケア、家庭医の育成に力を入れている当センターに
魅かれ、北海道まで来られたとのこと。

こちらに伺った経緯については、道立病院の現状を調べていた時に
道立寿都(すっつ)病院を町に移管した結果、うまくいっているとの記事を
目にしたからです。
・2005年に寿都町の診療所となり、道立病院時代は毎年3~4億円の赤字
 が移管後は1.7億円まで圧縮された。
・移管にあたって、家庭医療学センターから常勤の医療スタッフを派遣する
 業務提携を町と結び、「家庭医療」を提供している等々。

地域医療とともにプライマリーケアの重要性、総合医の育成が求められて
久しいですが、実際のところは都市部に医師が偏在している問題を棚上げし、
医師不足ばかりが叫ばれています。

当センターの取り組みや家庭医の役割について、草場医師はとても丁寧に
分かりやすく、そしてエネルギッシュに話してくださいました。
多岐にわたる内容の一部をご紹介すると…。

◆そもそも家庭医ってなに?
・日本でも80年代に家庭医制度の動きがあったが、医師会の情緒的反対で
 いったん封印された。その後、医療界の重鎮もプライマリーケアの重要性に
 ついて発言、若手医師による動きもあり、3つの学会が統合し、2年前に
 日本プライマリケア連合学会が発足した。
・現在、厚労省の「専門医のあり方検討会」が開かれ、今後、医療法への
 新たな位置づけも検討もされていくだろう。
・日本では医学生の6~7割が町医者志望だが、そのための専門的
 トレーニング研修制度はなく、実際は内科でも呼吸器、腎臓など身体の
 パーツごとに専門が分かれている。
・日本では家庭医と呼べる医者は1~2パーセント(イギリスは70%、
 カナダ50%、アメリカ30%)だが、すでに開業医となっている人を再研修
 するなどし、30%まで引き上げればよい。
・家庭医の研修の受け皿は、全国で130もあり、千葉でも4つの団体がある。
 (そのうちの1つとはつながりがあるが、その他もぜひ視察したい!)
・東日本大震災の時もトータルに身体を診られる、家庭医が大活躍した。
 (パーツごとの専門医は災害時、役に立たない?)

◆家庭医療学とは何か?
①予防医学も含めた包括的な医療を提供すること
②多職種協働によるネットワークをつくりながら、診療のハブになること
 (ケアマネ、民生委員、市の福祉職員等との連携)
③患者の生活も含めた全人的医療にこだわること
 (ちゃんと薬飲んでますか?食事に気をつけてますか?などの声掛け
 だけでは意味がない)
④地域の健康改善につながる取り組み
 (病院に来ない人は大丈夫か?地域医療とは、村づくり・街づくりであること)

草場医師はお忙しいにもかかわらず、「せっかく来られたのだからどうぞ」と
2時間にわたって私たちの質問に笑顔で答えてくださいました。
こんなに素敵な若手医師がいるのだから、「日本の医療に明日はある」と
一同が確信。
私たちも千葉の地域医療のため、がんばります!

最後に先生を囲んで記念写真
草場医師と

3日間にわたる札幌滞在でしたが、福祉・医療のパイオニアの方々から
ご教示いただき、とても有意義な視察となりました。