脱原発の民意はどこへ?
衆院選最終盤の15・16日に日比谷で脱原発会議2が開かれた。
昨年はパシフィコ横浜で数万人の規模の参加があり、大盛況だったが、
今回は打って変って信じられないほどの人の少なさにびっくり。
私も全日程は参加していなかったが、東商ホールはがらがらだった。
選挙の影響も大きいとは思うが、それだけではないように思う。
というのも、衆院選は自民党の圧勝で終わり、争点の一つであった
脱原発の優先順位は低く、有権者は雇用や経済、年金などの社会保障
に着目して投票行動をとったという分析もある。
原発事故から1年9か月が経過し、人々の意識が脱原発から徐々に
薄らいでいるのではないか。
このところ福島の現状、被災者の方々の暮らしぶりなどメディアからの
発信も少なくなり、ただでさえ熱しやすく冷めやすい国民性もあいまって
いるのではないだろうか。
しかし、そんな分析をしている場合ではない。
折しも福島では国際原子力機関(IAEA)が福島入りし、
放射線測定、除染、汚染廃棄物管理の3分野で福島県との
共同プロジェクトに着手することが明らかになった。
すでに15日には「原子力安全に関する福島閣僚会議」が開かれ、
福島県と覚書を締結したのである。
シンポジウム「チェルノブイリから学ぶ 低線量被ばくと
IAEA・WHO」では、IAEAやWHOがチェルノブイリ事故に
よる低線量被ばくの健康影響について、圧倒的に過小評価した過去が
アレクセイ・ヤブロコフさん(ロシア科学アカデミー)から語られた。
IAEAは原子力の平和利用を推進する機関であり、チェルノブイリ事故
を過小評価してきた同機関が福島県にやってきた意図は何か?
今後、福島県の関連施設に活動拠点を置くというが、福島の事故の影響も
また過小評価し、福島の子どもをはじめ県民にすでに出ているさまざまな
健康被害や将来への影響を隠ぺいするのではないかとの声があがっている。
現在の日本の安全基準は年間20ミリシーベルトと高く設定されてしまって
いるが、それをIAEAの安全基準100ミリシーベルトまで緩めてしまう
のではないかとの危機感が高まっている。
パネリストの一人である福島から札幌に移った中手聖一さんご自身も
胸膜炎や歯茎の病気、髪の毛が抜けるなどの健康被害が出ているとのこと。
福島の避難者は総務省の調査では16万人といわれているが、県外は
6万人であり、今年5月時点での福島大学の調査でも中学生以下の子ども
のいる世帯では50.8%ができれば避難したいということだった。
しかし、福島では国や県による被害隠しが進行し、現地は「大丈夫」
ムードになっている。
国は因果関係の証明、賠償だけを関心の的にしようとし、小児甲状腺ガン
以外の健康被害を無視し、命を守ることを全くしていない。
因果関係は後回しにし、個人に対する総合的健康調査が何よりも必要だ
と怒りを込めて語ってくださった。
この他にも、坂上武さん(福島老朽原発を考える会)や吉田由布子さん
(チェルノブイリ被害調査・救援 女性ネットワーク)から充実した
報告があった。
今後、原発事故子ども被災者支援法の基本方針が示される予定だ。
12月議会の一般質問で取り上げたところ、年内策定との見通しで
国の動向を見るとのことだった。
しかし、政権の枠組みは大きく変わり、その中味が心配だ。
実行性ある内容となるよう注視し、声を上げていかなければならない。