歴博開館30周年(その2)

3月19日(火)

午後2時からの記念式典には、国内外から数多くのゲストが参集
記念式典

歴博第6代館長である平川南さんの式辞でスタートした。
平川館長

歴博は、開館以来、「博物館」としての機能、「大学共同利用機関」
という2つの機能を有していた。
2004年に法人化(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構)し、
その存在意義をより一層明確にすることが求められた。
そこで2007年に歴博の新たな理念と基本方針を定めることになり、
新しい研究スタイル「博物館型研究統合」を提唱したとのこと。

いただいたリーフレットには、次のようにある。
「博物館型研究統合」は、歴博のめざす新しい研究スタイルです。
資源・研究・展示を相互に「つなげる」。
公開・共有によってその環を「ひろげる」。
活動の内容や成果を分かりやすく社会に「つたえる」。
そして、過去・現在・未来を貫く、認め合える視点を「みつける」。
わたしたちは「博物館型研究統合」を通じて、歴博のさらなる可能性を
切り開く努力を続けていきます。

平川館長は、スピーチの結びで次のように語られた。
初代井上館長は歴博の目指す新たな博物館像を確立させることは
「百年の計」とされたことから言えば、まだ30年である。
2007年に定めた「歴史が未来を切り開く」という歴博のミッションを
遂行していきたい。

千葉県を代表し、滝本教育長もお祝いに駆けつけた。
滝本教育長

韓国の国立中央博物館から宋義政考古歴史部長も来日し、
海外との研究交流の一端が紹介された。

式典後、中庭で気仙沼の市民芸能「虎舞」が披露される。
この日のためにはるばる気仙沼から「浪板虎舞保存会」の皆さん方が
佐倉までお越しくださった。
虎舞1

太鼓をたたいているのは、小学生から高校生ぐらいの子どもたち
虎舞2

お囃子と太鼓に合わせて、虎が登場
虎舞3

人に先導され、はしごをのぼる虎
虎舞44

東日本大震災後、気仙沼にも津波が押し寄せ、震災の爪痕が
大きく残された。
歴博のスタッフがこの気仙沼地域に文化財レスキュー活動に入り、
有形文化財である資料や美術工芸品などの救出、修復に携わってきた
という。
消防や警察による被災地支援は脚光を浴びたが、文化財の復旧という
復興支援には光が当てられず、多くの人がこのことを知らない。

そんな気仙沼とのご縁で今回「虎舞」が披露されたのだが、
こちらは「無形文化財」としてその昔から地域で連綿と伝承されてきた
民俗芸能である。
震災の困難をも吹き飛ばすような力強いパフォーマンスに胸が熱くなった。

その後、リニューアルした展示室を見学したが、斬新な視点による空間は
驚きの連続!
解説付きで駆け足での見学だったので、またゆっくりと訪れたい。

特に気になるのが「かっぱ」のコーナー
かっぱ1

かっぱ2

歴博からいただいた冊子
歴博冊子

東日本大震災の冊子のあいさつ文からの抜粋

「今次の大震災は、我が国の社会構造そのもの、そして学問体系の
再検討をも迫るものであった。展示では気仙沼の地域が幾たびもの津波や
地震の被害を受けながら、その都度粘り強い努力と自然への働きかけに
よって、新たな歴史を築き上げてきた過程が示される。大規模な災害さえ、
自らの歴史や文化の中に取り込み、昇華していく人々の生活が、そこに
あるのである。この特集展示を通して、少しでも多くの人々に被災地の
現在とその土地での人びとの生き方に関心を持っていただき、
地域の復興と歴史文化の継承の一助となることを願ってやまない。」

歴博の「博物館型研究統合」がめざす
過去・現在・未来を貫く認め合える視点を「見つける」とは何か?

同じ日本語でありながら、日常的に接する言葉とは違った磨き抜かれた
「言葉」を平川館長のスピーチや歴博の冊子から感じ取りながら、
しばし心豊かな時間を過ごすことができたことに感謝!

もうすぐ佐倉城址公園の桜も開花します。
ぜひ皆さんも歴博に足を運んでください。