平成28年6月議会 一般質問

質問原稿

1.地下水汲み上げ規制の見直しについて

千葉県は地下水の汲み上げを1970年から条例で規制し、その2年後には届出制から許可制に切り替え、現在に至っています。

この背景には1970年の国会で公害対策基本法第一条の経済調和条項が削除され、公害防止対策を優先することについて社会的同意が得られたこと、そして翌71年に東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県による南関東地方地盤沈下調査会が「関東地下水盆説」を提唱したことがあります。

被圧地下水と呼ばれる深層地下水が関東平野の地下深くでほぼ一つにつながっているため、地下水規制を特定の地域だけで行っても十分に効果が得られにくい、「やがて枯れる関東の地下水」との警告が発せられ、その後、東京、埼玉、千葉で厳しい地下水規制が進められることになりました。

私の住む佐倉市も1974年に地下水汲み上げ規制の対象区域に指定されましたが、市の水道水源井戸32本から安全でおいしい地下水を汲み上げ、供給されています。現在の佐倉市の水道水は地下水の割合が62%、利根川の表流水は38%です。

ところが、八ッ場ダムや霞ケ浦導水が完成すると、暫定的に県から許可されている井戸24本が閉じられ、地下水の割合は23%程度に減らされます。県の環境保全条例では地下水汲み上げ規制が始まった後に設置許可された水道水源井戸は暫定井とされ、川の水、表流水に転換されるのです。

しかし、規制が始まった四十数年前と異なり、現在では県内の地盤沈下はほぼ沈静化しています。県内各地域の沈静化の実情を踏まえて汲み上げ規制の見直しを行う必要があります。地盤沈下は地下水汲み上げや天然ガスかん水採取の人為的要因や地震等の自然的要因など複合的に起きると言われています。

県全体の地下水揚水量は規制前と比べてこの40年間で半減、佐倉市でも最近8年間を見ると日量5万トンから4万トンに減少しています。仮に暫定井戸をすべて廃止したところで地盤沈下は収まるのか、水道水源井戸の汲み上げとの因果関係も分析されていません。

その一方、近年首都圏において地下水ビジネスが普及し、上水道から地下水に切り替える事業者も増えています。

東京都や埼玉県では揚水機の吐出し口面積6㎠以下の小口径井戸に対する規制を行っています。特に東京都では今年7月1日からさらに規制を強化し、出力300ワット以下の揚水機について一戸建て住宅で家事用以外、すべての小出力ポンプが対象になります。条例規制基準である日量10㎥を超える揚水が可能な小水力ポンプが流通しているとの問題意識からです。

一方、千葉県の環境保全条例では小口径井戸への規制もなく、揚水量報告義務もありません。 水道料金が高いからと地下水に切り替える動きをこのまま放置して良いのでしょうか。

2014年7月成立の水循環基本法では地下水を公共水と位置づけ、持続可能な地下水の保全と利用を図るため、地域の実情に応じた地下水マネジメントを推進することになります。

千葉県も公平性の観点から、現在の規制のあり方について見直すべきです。

これまで佐倉市議会からも貴重な水道水源である地下水を守り飲み続けるために県条例による地下水採取規制の見直し求める意見書が3度千葉県に提出されてきました。安全でおいしい地下水は私たち市民のまさに命の源であり、将来世代に継承すべき財産です。

そこで、3点質問します。

  1. 暫定井戸からの地下水汲み上げが地盤沈下を引き起こすという因果関係が明確化されない段階においては、水道水源としての利用を継続すべきと考えるがどうか。
  2. 規制外の井戸による地下水の汲み上げの実態も含めて地下水の流動状況をより詳細に把握すべきだがどうか。
  3. 地下水汲み上げ規制の対象や区域の見直しを検討する必要があると考えるがどうか。

2.医療・介護問題について

医療介護総合推進法の施行により、2025年に向けて2次医療圏ごとに入院ベッドの機能や数を再編する地域医療構想が動き出しました。

10年後を睨み、「医療から介護へ」「施設から地域へ」といった流れで進められていますが、その受け皿が整わなければ医療・介護難民が生じかねません。

とりわけ医師、看護師の数が全国最下位を低迷する本県にあっては、10年、20年後の医療人材をいかに千葉に呼び込み、定着させるのか。県民の命と健康を守るための医療体制を地域でつくっていくことは最優先課題です。

とりわけ私たち会派は、プライマリ・ケアドクターに注目してきました。家庭医、総合診療医ともいわれ、患者の身体を臓器別ではなく全人的に診察し、内科や外科といった診療科の垣根を越えて対応することができるドクターです。救急医療にも対応することができるので、医療過疎地である長野の諏訪中央病院では8割を占めるプライマリ・ケア医が大活躍していました。

県内では館山にある亀田ファミリークリニックを訪ね、地域医療の中心的役割を果たしているプライマリ・ケア医から直接お話を伺ってきました。この専門医については、19番目の診療科、総合診療専門医として創設されることが決まり、来年度から新たな研修プログラムがスタートします。

千葉大学医学部においても超高齢化社会でのさまざまな問題を解決できるこの新たな専門医の養成に力を入れており、「総合診療医ドクターG」でおなじみの生坂正臣先生から、その意義と今後の展開について先月お話を伺ってきました。

そこで、医師の養成確保について、3点お伺いします。

  1. 本県における医師確保の取組状況と今後の見通しはどうか。
  2. 県内にプライマリ・ケア医はどれくらいいるのか。
  3. 本県における総合診療専門医プログラムの申請状況はどうか。
    また、県は総合診療専門医養成に向けて、今後どのように支援していくのか。

(2)県立病院について

千葉県保健医療計画では県立病院の担うべき役割を高度専門医療に特化し、地域完結型の一般医療、地域医療については地域の市町村等が中心となり新たな受け皿づくりを進めると書かれています。

現在、地域医療を担っている佐原病院や循環器病センターの今後のあり方については、次期保健医療計画策定時である 2018 年までに協議検討すると答弁されてきました。しかし、県の病院局も健康福祉部もこの問題に主体的に取り組もうとはしていません。

地域医療から県が撤退することについて、果たして県民合意は得られているのでしょうか。 地域医療の重要性が増す中、改めて議論する必要があると考えます。私たち会派はこれまで各県立病院を訪ね、医療現場の方々から率直なご意見をお聞きし、さまざまな問題や課題を目の当たりにしてきました。そのほとんどが施設の老朽化や狭あい化による物理的な問題がネックとなり、環境改善が進まないジレンマに陥っています。本来ならば、十年も前に建替えや増築されるべきところが、放置されています。

特に佐原病院は災害拠点病院にもかかわらず、依然として本館は耐震不足、循環器病センターも2期計画が凍結されたまま現在に至り、圧倒的なスペース不足に悩まされています。

医療現場の皆さんがこれら改善の見通しが立たない県立病院に踏みとどまることができるのか、モチベーションが保たれるのか、極めて危うい状況にあるのではないかと感じています。そのような中でも病院長の方々からはそれぞれの病院の使命と将来構想が真剣に語られ、意を強くした次第です。

こうした医療現場の声を真摯に受け止め、その思いや願いに応えていくことが何よりも求められています。

そこで、4点質問します。

  1. 県立病院における研修医の定着状況はどうか。また、研修医確保に向けた課題は何か。
  2. 救急医療センターと精神科医療センターの合築にあたり、医療現場の声をどのよう に反映していくのか。
  3. 次期保健医療計画策定に向けて、「地域医療の拠点」としての佐原病院や循環器病 センターの位置づけを含め、県立病院のあり方を議論すべきと考えるが、今後どのよ うなプロセスで検討していくのか。
  4. 各県立病院から出ている環境改善の要望に対し、どのように進めているのか。佐原 病院の耐震改修、循環器病センターのプレハブ増築や保育所拡張、救急医療センター や精神科医療センター等での医療スタッフの仮眠スペース確保をはじめ、今年度の具 体的な取り組み状況はどうか。

(3)在宅医療・介護の連携について

本県における在宅医療の需要は 20 年後がピークで今の2倍、一日 92,000 人という推計が出されています。

しかし、受け皿である在宅療養支援診療所や訪問看護ステーションの数が県全体でも圧倒的に不足している状況です。

県内7市では 2013 年度から医療と介護の連携、 国のモデル事業である在宅医療推進拠点事業が先行的に3年間実施されてきました。

この取り組みが介護保険に位置づけられ、2018 年4月までに在宅医療・介護連携推進事業として全市町村で行われることになります。

そこで、2 点お伺いします。

  1. 市町村における在宅医療・介護の連携の取組状況や課題はどうか。
  2. 今後、佐倉市を含む印旛保健医療圏に対し、県はどのように支援していくのか。

3.国保広域化について

病気やけがをした時、頼りになるのは公的医療保険制度であり、日本の国民皆保険制度を下支えしているのが、国民健康保険、国保です。

国保は構造的な問題を抱えており、①加入者に占める高齢者が大きく、医療費水準が高い②所得水準が低いため、保険料負担が重い③市町村間で財政力格差がある④国保財政は赤字、等々です。社会保障プログラム法成立後、全国知事会は国保の広域化の前提条件は財政問題の解決であるとし、国との協議を続けてきました。

一昨年6月には抜本的な財政基盤強化の具体策を一刻も早く提示するよう要請し、具体的に協会けんぽ並みの保険料負担率まで引き下げるには約1兆円が必要と主張していました。

ところが、国は市町村が実施している国保財政の赤字補てん、一般会計からの法定外繰入額相当の3400億円を投入するとし、見切り発車。2018年度から国保の広域化、都道府県化が始まります。しかし、市町村の実質赤字は繰上充用を含めて5000億円であり、赤字解消にはつながりません。

そもそも国保会計が赤字に転じたのは、1984年に45%だった国庫支出金が現在は23%まで減らされたことも原因であり、広域化の真の目的は医療費抑制の強化に他なりません。

議長のお許しを得て資料を配布させていただきました。

2013年度県内市町村の国保会計収支決算の一覧です。表中ごろの一般会計法定外繰入については、主に赤字決算を防ぐため、或は保険料の値上げを防ぐため等々、各自治体の政策的判断で行われているのがお分かりになるかと思います。6割強の34自治体で160億円を超える法定外繰入が行われています。

このような自治体の判断が広域化によってどのようになるのでしょうか。今後、県は市町村との協議を経て県内の統一的な国保の運営方針を策定し、市町村ごとの県への納付金を決定し、標準保険料率を定めます。引き続き、市町村は、被保険者証の発行、保険料率の決定、賦課徴収を担うことになります。しかし、県に100%納めなければならない納付金のために各市町村が保険料の引き上げや徴収強化を図りかねない事態も予想されます。

そこで、以下4点お伺いします。

  1. 県内市町村における国保会計の財政状況はどうか。
  2. 市町村における一般会計からの法定外繰入についての見解はどうか。
  3. 千葉県国保運営方針の策定にあたって、保険料や保険実務の統一についてどのように考えるのか。
  4. 千葉県国保運営方針策定プロセスにおける情報公開及び今後の具体的なスケジュールはどのようになっているのか。

4.障害者福祉

2013年11月26日千葉県袖ヶ浦福祉センター養育園において19歳の重い知的障害のある少年が職員から暴行を受け、命を奪われました。

さらに、その後の調査では過去10年間で15人の職員が23人の施設入所者や利用者に虐待暴行を行っていたことが明らかになり、県民を震撼させました。

事件後、第三者検証委員会が設置され、事業団幹部の刷新、職員の教育や意識改革、外部チェック体制の整備・強化を求める緊急提言が出され、翌年8月には最終報告が示されました。これに基づき入所者の権利擁護に向けての取り組みが進められています。

先月9日、袖ヶ浦福祉センターを会派で訪れ、新しく就任した相馬理事長から直接お話を伺い、施設内を案内していただきました。当センターを訪問するのはこれで3度目でしたが、以前と比べて内部の雰囲気に明るさが感じられました。3年前のあの痛ましい事件を決して風化させることなく、強度行動障害をはじめ障がいのある方々を支える原点にしていかなければなりません。

重い障害があっても大規模入所施設ではなくグループホームで暮らすという選択、地域移行は国の基本指針でも示されています。

千葉県では強度行動障害のある方の地域移行のモデル事業を成田にあるしもうさ学園で実施しており、その様子を見てきました。まさに千葉県モデルとして今後大きく展開していきたい支援のあり方を学ぶことができました。

そこで、2点お聞きします。

  1. 袖ヶ浦福祉センター改革の取組状況と今後の見通しはどうか。
  2. 強度行動障害のある方を支援するための研修やモデル事業が実施されたが、その評価と今後の展開はどうか。

5.定時制高校について

千葉県の定時制高校は17校あり、現在2902人の生徒が学んでいます。

昨年度、東葛飾高校と千葉工業高校の夜間給食が廃止され、今年度その対象に東金高校、松戸南高校、木更津東高校を加え、5校に拡大しました。

教育庁はあくまでも「試行的廃止」ということで今後の給食のあり方について、庁内の検討チームで話し合っているとのことです。

定時制高校の夜間給食は数年前に自校調理方式から1食300円程度のデリバリー給食へと変わりましたが、栄養教諭が献立を考え、温かく栄養バランスのとれた食事をとることができていました。先般、夜間給食が廃止された東葛飾高校と木更津東高校を会派で訪ね、給食に代わってコンビニのおにぎりやパンなどが出張販売されている様子を実際見てきました。かつて使われていた立派な厨房と広い食堂スペースには生徒の姿は少なく、閑散としていて活気が失われたようでした。

夜間定時制高校の給食は法律の目的第1条で「働きながら学ぶ生徒の健康の保持増進に資するために実施する」と明記されています。

お手元の配布資料は木更津東高校創立百年史より抜粋した定時制の生徒代表の挨拶文になります。読んでいただくと、夜間給食は生徒の健康と学びを保障する、定時制教育そのものということが伝わってきます。

時代や社会情勢が変わっても、夜間給食を必要とする生徒は目の前に存在しており、改めてその意義を捉えなおす必要があります。

早急な再開を求め、2点お聞きします。

  1. 定時制高校の生徒の就労状況や経済的状況はどうか。
  2. 定時制高校夜間給食の今後のあり方について、どのような視点で検討し、誰が評価していくのか。

以上で第1回の質問を終わります。

質問原稿・資料(PDF)