八ッ場ダム いまが正念場
ご無沙汰しております。
前回のブログ更新から、あっという間に2週間が経過。
この間、市内各駅での早朝街宣・県議会速報の配布で連日、5時起き。
決算委員会やネット通信づくり、審議会や学習会、各種会議の参加で
朝から晩まで飛び回っていました。
おまけに八ッ場ダム検証についても、10月29日(土)に意見聴取の応募締め
切り、4日にはパブリックコメント締切と矢継ぎ早の国交省に振り回される
今日この頃…。
3年前から国交省は利根川の治水計画である河川整備基本計画の策定作業を
棚上げし、そのままほったらかしにしているのに、今回は自分たちの都合で
検証を急ぎ終わらせようとしている。
ご都合主義もいい加減にしてほしい。
11月6日(日)
国交省が流域住民の意見を聞きおく「意見聴取」の場を設定する
というので、万難を排し、香取市の会場(水の郷さわら)まで中村さん、
大野さんと出向いた。
午後1時定刻にスタートし、意見発表は私たち3人だけ。
関東地方整備局の3人の職員が自己紹介し、他の職員はに10人ほど。
傍聴者は、新聞記者2人、一般の人が3人ぐらいで「本日は私たち3人のために
わざわざどうも」というくらい活気はおろか、無機質な会場で淡々とそれぞれ陳述。
お役人の方々の能面のような表情を横目にあっけなく「事情聴取」は終わった。
のれんに腕押し、糠に釘ともいうべき無力感、脱力感を感じながら、
会場を後にした。今回の「意見聴取」を国交省側のアリバイづくり、
流域住民の意見は聞きましたという既成事実にさせてなるものか、
今週から来週にかけて行う国会ロビー活動では流れを変えるべく
がんばらなければ!!
まだまだ「検証」は終わっていません。
以下、少々長いですが、当日の原稿をアップします。
八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討報告書(素案)に対する意見
2011年11月6日 佐倉市 入江晶子
1.検証のあり方について
初めに、今回の検証のあり方についてです。検証主体がダムを推進してきた
国交省自身であること、従来の河川行政に異論を唱えない学者が非公開の場で
検証のベースをつくったことなど、当初から八ッ場ダムありきの検証作業で
あったことに異議があります。本来、有識者会議で話し合うべきテーマは
「なるべくダムに頼らない治水政策」であり、前原元大臣の「八ッ場ダム中止
宣言」を受けた「予断なき検証」を行うことが目的であるべきでした。
しかし、有識者会議ではダムの必要性を科学的客観的なデータに基づき
検証するのではなく、ダムの残事業費と代替案のコスト比較をし、
八ッ場ダムが最も有利と結論づけたのです。
これでは「予断なき検証」など行われるはずがありません。
目的と手段が歪められ、ダムありきの結論を導き出すための
アリバイづくりが行われたと断じざるを得ません。
福島原発事故により、「原子力ムラ」の存在が顕在化したように、
この度の検証結果で「河川ムラ」ともいうべきダム利益共同体の結束が
示されたのではないでしょうか。
「予断なき検証」は行われていません。
2.流域住民を無視した非現実的な対策案
第二に、今回の検証がいかに流域住民を無視した机上の空論であったか
という点についてです。利水面においては、実績とかけ離れた利水予定者の
過大な水需要予測を見直すことなくそのまま容認しており、これではまったく
意味がありません。千葉県は2008年9月に策定した長期水需給計画に基づく
データをあげていますが、概ね2005年度までの実績をベースとした予測です。
すでに水需要は漸減傾向にあり、最新データに基づき、水需要の精査をする
ことなど容易にできる時代です。それを行わなかったのは、行政の不作為と
言わざるを得ません。
また、ダムの開発予定水量である毎秒22㎥を前提とし、代替案を検討しています。
国交省は、藤原ダムの掘削や富士川からの導水、渋川市周辺での地下水取水
等々の代替案は大幅な法改正や河川行政のシステム変更を伴わない範囲で
あらゆる方法を模索した結果であると説明しています。
しかし、富士川からの導水路は概算で1兆円以上かかり、非現実的です。
残事業費が1千億円程度の八ッ場ダムが有利と結論づけるための対案に
過ぎず、机上の空論です。都県側も5月24日に開かれた国と6都県の
「検討の場」において、これらの代替案を「荒唐無稽だ」「実現性に乏しい」と
一斉に批判し、建設を前提とした再検証作業の早期終結を強く要望しています。
多額の負担金を出してきた関係都県は現実的な対応を求めています。
その意味でもダム中止に伴う補償法を制定しダム建設の場合と同程度の
水利権を都県に分配する、暫定水利権の安定化の検討がなぜ提案され
なかったのでしょうか。
既存の枠組みでの検討を国交省が主導するのではなく、
水利権許可制度の改善など、現実的で利水者のメリットにつながる代替案を
議論すべきと考えます。
次に治水面については、河川整備基本計画策定時の目標流量毎秒15000㎥
を無視し、新たに河川整備基本計画相当量17000㎥を持ち出して八ッ場ダム
を必要不可欠と位置づけました。
整備計画時の目標流量15000㎥を2000㎥に引き上げ、ダム等による
洪水調節量を2000㎥から3000㎥に、河道対応流量も13000㎥から
14000トンに引き上げました。
しかし、これらについての科学的根拠が示されていません。
ダムありきを前提に恣意的操作が行われたことは明らかです。
2006年2月、国交省は河川整備基本方針を発表。
同年12月からより具体的な治水対策である河川整備基本計画の策定作業を
開始し、公聴会も開かれました。
私は5年前の当時、埼玉での全体公聴会の場において、印旛沼を経由する
新たな利根川放水路計画がいかに非現実的か、流域の治水対策の現状
について、住民の立場から公述しました。
しかし、その後、この基本計画策定の手続は、理由不明のまま中断しています。
5年前に公述した時と今回の意見聴取にあたっての前提が大きく異なるのは、
整合性がなく納得できません。
97年に改正した河川法では「住民参加」と「環境保全」の新たな視点が盛り込まれました。
その法の精神に沿って、河川整備基本計画の策定が進められるべきです。
今回の検証結果についての意見聴取を既成事実とし、河川法に規定された
必要な手続きを踏むことなく利根川水系河川整備計画の内容を決めることは
断じて認められません。
一方、千葉県も国にダムの早期完成を求めるだけであり、八ッ場ダムが
本県下流域の治水対策としてどのような効果があるのか、
具体的な検証を行っていません。
利根川上流の吾妻川流域にはダムがないからバランスよく配置する必要が
あるとの国の言い分をそのまま認め、下流域でたとえ1センチでも水位を
下げることが重要との認識です。
500億円もの県負担に照らして費用対効果はどうなのかなど、関心外で
すべて国にお任せの姿勢です。
いったい誰の何のための公共事業なのでしょうか。
3.工期延長と事業費増額について
最後に、工期延長と事業費増額についてです。ダム本体工事に着手した場合、
完成までの期間は87カ月(7年3か月)と示されています。
これまで工期の遅れは政権交代の中止方針によって説明されてきましたが、
実際は付帯工事である鉄道や国道の工事の遅れが原因です。
私もこれまで幾度となくダム建設予定地を訪れ、工事の進捗状況について
説明を受けてきました。計画では2011年3月末完成予定ですが、
鉄道の新駅付近の用地買収が難航し、見通しが立っていません。
また、工期の点検結果を見ると、ダム本体工事完成後の試験湛水開始から
6か月後に供用開始となっています。
しかし、現地調査を行った専門家は試験湛水後に地すべりが起こり、
その対応策に時間も費用もかかると指摘しています。
実際、滝沢ダムは本体工事着手から事業完了まで12年1カ月、
宮が瀬ダムは14年5か月かかっています。
また、都県側の一番の関心事である事業費増額については、点検結果で
149億3千万円の増額が示されました。
この点についての都県側の追及に対し、「あくまでも代替案と比較するための
仮置きの数字であると理解してほしい」と基本計画変更の議論を避けています。
しかし、都県側は第3回の幹事会において「増額負担はまったく支払う理由は
ない、そのことは議論の余地はないので、一切払わない」と言明しています。
千葉県の利水負担金は昨年度までに261億2千万円、
建設負担金は165億8千万円、合計427億円になります。
千葉県も震災の復旧復興予算が嵩み、
今年度180億円の財源不足が予測されています。
工期も事業費も見通しが立たない八ッ場ダム事業にこれ以上、
巨額の税金を投入する余裕はまったくありません。
何よりも急ぐべきことはダム計画によって60年間、翻弄されてきた
現地住民の方々の生活再建です。
国は早急に法案成立に着手し、八ッ場ダムは完全中止すべきです。
東日本大震災と福島原発事故の経験を踏まえ、私たちは従来の
公共事業のあり方や価値観を見直す選択に迫られています。
今回の検証についても机上の空論を議論するのではなく、
流域の住民生活の視点から現実的で真に実効性のある対策を
議論すべきです。
そのためにダム推進に異論を持つ科学者や流域住民の参加による
公開の場での意見交換会、対話集会など検証プロセスに盛り込み、
河川法の規定に基づく再検証を強く求めます。 以上