令和3年2月議会 予算委員会(入江質疑箇所)
目次
2021年2月17日(水)
なお、質疑要旨は正式な議事録ではありません。
質問原稿
本日は新型コロナウイルス感染症対策、保健所の体制強化、有機農業の推進について取り上げます。課題解決に向けて執行部の皆様と建設的な議論を進めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、新型コロナウイルス第3波が収まらず、緊急事態宣言が延長されました。感染者数は減少傾向にありますが、感染経路不明の感染者や無症状感染者の増加と同時に、昨年12月以降高齢者施設や病院等における集団感染、いわゆるクラスター事案が増加しています。私の地元佐倉を含む印旛保健所管内でも、1月末に佐倉の特養で13名、先週には酒々井町の子ども園で23名、そして昨日は佐倉市内の高齢者施設で26名とクラスターが続出しています。県内のクラスター件数は、2月12日までに213件にのぼるとのことです。
特に佐倉の特養におけるクラスターについては、土日も印旛保健所や本庁コロナ対策本部が調整に当たり、クラスター等派遣チームから医師や看護師が初動対応に駆け付け、今に至るまで継続的な支援が続けられています。
休日夜間・24時間体制で地域住民の命を守るため、ご尽力いただいている医療従事者の方々、保健所をはじめ県職員の皆様に対し、改めて感謝を申しあげる次第です。
1. 初めに、新型コロナウイルス感染症対策について、お伺いします。
(1)クラスターの発生防止にどのように取組んでいるのか。
新年度予算では、クラスター発生施設等への医療従事者派遣として3,057万円が計上されています。昨年6月からクラスター等対策チームが立ち上がり、事前登録された県内医療機関に所属する感染症専門医や感染管理認定看護師、FETPと呼ばれる実地疫学専門家がクラスター等発生施設に派遣されています。派遣先におけるPCR検査、ゾーニング、感染症予防指導等の対策を行うことになっています。そこで、お伺いします。
(2)クラスター等対策チームの派遣実績及び課題はどうか。
クラスター等対策チームの登録者数は医師と看護師を合わせて約100名とのことです。いずれもコロナ患者受入医療機関に勤務しており、多忙を極める勤務先から県の派遣要請に応じ、献身的にご対応いただいてます。県は各病院との協定を結び、派遣医師については、一日あたり44,000円、看護師は23,000円の手当を出していますが、派遣元の医療機関への支給であり、個人への手当ではありません。本来業務を担いながらも、県の要請にご協力いただいている状況です。医療者も人です。高い使命感や善意に頼るばかりでは持ち応えられません。クラスターは未だに収まっていません。コロナとの闘いも長期戦となっており、引き続きご対応をお願いすることになります。そこで、要望します。派遣された医療者個人に対する直接的な手当の支給について、早期に検討していただくようお願いいたします。
次に、FETPと呼ばれる実地疫学専門家については、今回のクラスター等対策チームの一員として大活躍していますが、現在、県には3名しかいないとのことです。そこで、お伺いします。
(3)実地疫学専門家(FETP)の養成・確保をどのように進めていくのか。
これまで国は自治体に対し、医療機関や高齢者施設等におけるクラスター発生を防止するため、積極的なPCR検査の実施を求めてきました。私も昨年来、特に高齢者施設等における「一斉・定期的検査」の実施を求めてきましたが、県当局は消極姿勢にとどまっており、その実施には至りませんでした。しかしながら、国は多発するクラスターを押さえるため、2月7日の緊急宣言延長に伴う対処方針において、県に高齢者施設等に従事する職員へのPCR検査を確実に実施するよう通知。そのための集中的実施計画をつくり、3月末までに検査を実施すると聞いています。そこで、お伺いします。
(4)高齢者施設等に向けた積極的なPCR検査の実施をどのように進めていくのか。
ようやく本県でも高齢者や障害者入所施設の職員へのPCR検査の実施についての予算が今議会の追加補正で出されました。感染多数地域の対象施設は約1000施設、対象人数は約5万人との説明がありました。県全体の三分の二をカバーし、東葛や印旛地域を想定しているとのことです。そこで、お伺いします。
再質問
感染多数地域とした判断の基準はどのようなものか。
再質問
集中的実施計画を提出した際の1週間当たり対10万人の新規感染者数についての県内の状況はどうか。
一方、医療機関や保育園等でのクラスターも増えてきています。そこで、お伺いします。
(5)医療機関や保育園等でのクラスター発生を防ぐため、より積極的な検査を早期に実施すべきと思うがどうか。
高齢者・障害者入所施設だけではなく、クラスター発生リスクの高い場所における幅広い積極的な検査を早急に進め、感染拡大を抑え込んでいかなければなりません。無症状感染者に焦点を当てた検査、モニタリング監視も変異株の動向を掴むために必要とも言われています。保健所の現場、対策本部の皆様には長期戦で疲労が蓄積し、大変な毎日だと思いますが、引き続きご対応をよろしくお願いいたします。
2. 保健所の体制強化について
新型コロナウイルス感染症が引き起こした社会経済の混乱の中、保健所の役割が大きくクローズアップされました。感染症対策の拠点として、私たち県民の命と健康を守る砦として重要な役割を担っていることに改めて気がつかされたところです。
その一方、保健所は行革の流れや1994年地域保健法の制定により、統廃合が進められ、本県の県保健所は現在13カ所となっています。
公衆衛生行政の専門家によれば、いつどこで発生するか分からない感染症、グローバル化が進み、瞬く間に世界中で感染爆発が起こる感染症への対策は公衆衛生の最重要課題とされながらいつの間にか忘れ去られてきた。今回の新型コロナ対策としてワクチンや治療薬の開発も大事だが、予防の視点をもっと大切にし、日頃の備えをするためにも保健所機能を強化する必要があると力説しています。そこで、お伺いします。
(1)新年度の体制強化の具体的内容はどうか。
今回のコロナ感染症対応では、医療機関から保健所への届け出がファックスなどの紙ベースで行われていたこと、自宅療養者等の健康観察が電話で行われていること等々、アナログ業務の効率化が大きな課題でした。大阪府では4月20日から独自のICTシステム導入により、患者搬送の調整、入院調整の迅速化や患者の健康観察に係る情報の一元管理を行っていました。そこで所属会派では4月30日県当局に千葉県でも同様のシステムを導入するよう提案し、これまで繰り返し求めてきたところです。千葉県でも第1波が収まった頃に独自システムの導入を検討していたと聞いていますが、感染拡大に備え、なぜもっと早く対応できなかったのかとの思いが強く残ります。今回ようやく自宅療養者に対する健康観察アプリが導入されました。現時点では、松戸保健所のみの活用と聞いていますが、今後に備えて他の保健所への活用を進めていただきたいと思います。
続きまして、現在、感染予防の最前線を担い、陣頭指揮を執っている保健所長について、お伺いします。
(2)新年度における保健所長の配置や今後の退職数についての見通しはどうか。
これまで保健所長の人材確保や兼務の解消については、会派の代表質問等でも取り上げてきました。保健所長となる公衆衛生医師の確保と育成は、本県に限らず全国的にも喫緊の課題となっています。そこで、お伺いします。
(3)公衆衛生医師確保の取組みと今後の見通しはどうか。
再質問
本県において平成29年4月から公衆衛生医師プログラムを開設したと聞いているが、受講状況はどうか。
要望
今回のコロナ感染症対策においても、公衆衛生医師の重要性が改めて認識されたところです。「和歌山モデル」多くの方々がご存知のことと思います。和歌山県が政府の対応を待たず、医療機関でのクラスター発生に対し、県独自の基準で迅速な検査と感染ルートの追跡を徹底した結果、封じ込めに成功したことは海外からも称賛されています。この「和歌山モデル」の立役者は、野尻孝子福祉保健部技監でした。現場で真っ先に異変を察知する医療従事者と全体を把握して指揮する立場にある野尻技監ら行政が日頃から顔の見える関係を築き、ネットワークを構築していたことが、知事のリーダーシップもさることながら和歌山モデルの神髄だといわれています。野尻技監は小児科医として臨床の場で10年務めたのち、和歌山県内の保健所長を歴任しています。全国保健所長会の月刊誌に保健所長のリレーエッセイが連載されていますが、実に様々なキャリアをお持ちの医師が保健所長になっていることが分かります。千葉県としても、公衆衛生医師のやりがいや魅力をさらに積極的に発信し、今後の養成・確保に力を入れていただくよう要望します。
続いて、県保健所における保健師配置についてです。新型コロナ感染拡大防止を最前線で担う保健所の業務量は、1年分の業務量が1か月間に集中したような負担感だとも言われています。先ほど述べたような保健所におけるICT化の推進はもとより、要となる専門職、とりわけ保健師の増員を急ぎ進めていかなければなりません。そこで、お伺いします。
(4)新年度における県保健師の増員配置の見通しはどうか。
国は来年度予算編成に向けた地方財政計画において、保健所の恒常的な人員体制強化にある感染症業務に従事する保健師が1.5倍となるよう2年間で約900名増員するための方針を示しています。今後、各自治体において保健師の獲得に向けた動きが加速することが予想されます。そこで、お伺いします。
再質問
国の地方財政措置に伴う保健師の増員に向けて、どのように対応していくのか。
直近の国のデータによると、千葉県内の常勤保健師数は1053人、全国42位の少なさとなっています。
また、13ある県保健所の保健師の数は、今年2月1日現在、正規143人、非常勤10人、合計153人とのことです。新年度の新規採用が二十数名程度と聞いていますが、今後さらなる増員に向けて、早期のご対応をお願いいたします。
近年では豪雨被害なども頻発しており、災害時における健康危機管理対策も課題になっています。平常時から有事における危機管理対策に取り組み、機動的な組織体制を進める必要があります。国の通知がなければやらない、国の指示待ちではなく、千葉県として何が必要か、何をすべきかという基本姿勢、自治体独自のスピード感やタイミングが大事だと思います。中長期的な保健所の機能強化に本腰を入れて取組むことを強く要望します。
3. 有機農業の推進について
先月千葉県は第3次有機農業推進計画を策定しました。計画策定にあたって開かれた県の意見交換会では、佐倉市の有機農家でNPO日本有機農業研究会副理事長でもある林重孝さんをはじめとする県内各地の有機農業者、有機農業を積極的に推進しているいすみ市や木更津市の担当職員等による活発な議論がおこなわれました。この間、私も計画策定に大きな関心を寄せてまいりました。
また、先日はいすみ市を訪ね、有機農業を通じて、里山・里地・里海の自然環境の保全・再生を通じた地域活性化の実践についてお話を伺いました。「自然と共生する里づくり連絡協議会」の活動を通じて有機農業を戦略的に広げ、全小中学校での有機米「いすみっこ」の給食の実施、地域ブランド化、移住促進等々、さまざまな波及効果について、学んできました。そこで、質問します。
(1)有機農業の推進に係る予算額と主な事業はどうか。
(2)第3次千葉県有機農業推進計画で掲げられた目標はどのようなものか。
(3)目標達成に向けての課題に対し、どのように取組んでいくのか。
現在、県内有機農家数は297戸であり、計画では2030年度までに480人の目標を掲げています。一方、令和元年度における県内の新規就農者は317名、うち有機農業は17名(5%)とのことでした。県が実施したアンケート調査によると、有機農業への新規参入や転換参入には販売先、農地、資金の確保であることが明らかになりました。そこで、伺います。
再質問
県独自の「環境にやさしい農業」推進事業では、機械や資材購入について予算を超える要望があると聞いています。新年度の予算措置は十分なのか。
有機農業を面的に広げるためには、新規就農者だけではなく従来の慣行農業からの転換を促進する必要があると聞いています。現在、環境にやさしい農業、千葉エコ農業を担っている農業者に積極的にアプローチし、優良農地を有機栽培に転換していくことにも力を入れていただきたいと思います。
次に、有機農業を行う上で、雑草対策や省力化は大きな課題です。そのような栽培技術上の課題の解決に向けて、農業者と共に研究や技術開発を行い、普及していくことが重要とのことです。そこで、お伺いします。
(4)有機農業に係る普及指導員の育成をどのように進めていくのか。
有機農業を広げていくためには、普及指導員が力量を高め、地域でのネットワークづくりの要となることが重要だと聞いています。その第一歩としての研修の受講に加え、有機農業者とともに汗をかきながら栽培技術を磨くこと、現場で得たノウハウや知見に基づき、千葉県独自の栽培方法書作り上げること、そのような目標を持って着実に進めていただきたいと思います。
また、県内では山武市や佐倉市など有機農業に意欲的に取り組む農業者がいます。点を線、線を面に有機農業を広げていくためには自治体を含む地域のネットワークづくりが求められています。そこで、お伺いします。
(5)第3次計画推進に向けて、県内自治体とどのように連携していくのか。
要望
県内自治体との連携、特に官民の連携によるネットワークづくりに大いに期待しています。
有機農産物の生産と消費、いわば入口と出口を確保するためには市町村における消費・流通・販売が極めて重要です。特に消費拡大に向けて、公共調達としての学校給食での活用が大きな牽引力になります。
私の地元佐倉市内の民間保育園では東日本大震災時の原発事故をきっかけに給食食材をすべて有機農産物に変えました。そうしたところ、以前は野菜嫌いだった子どもが野菜好きになり給食を残す子どもがいなくなった。ご家庭でも有機野菜を購入する等、意識も変わり始めているというお話もお聞きしました。その一方、有機農産物は割高のため、給食費を抑えるためにも、園自前のオーガニックの野菜畑をつくり、今では地元でオーガニックマーケットも開催しています。
有機の里づくり、有機農産物の地産地消、身体も心も健やかに育つ安全で美味しい給食、夢のある政策をこの千葉県で進めていきたいと思っています。このような地に足を付けたローカルな取組みが、地球温暖化防止や生物多様性保全等、グローバルな政策課題の解決につながっています。
有機農業の可能性に着目し、より一層力を入れていただくようお願いし、私の質疑を終わります。