令和3年6月議会 予算委員会(入江質疑箇所)
目次
2021年7月5日(月)
立憲民主・千葉民主の会
入江あき子
なお、質疑要旨は正式な議事録ではありません。
質問原稿
1. 財政運営について
初めに、財政運営について、質問いたします。委員長の許可をいただき、お手元に資料配布させていただきました。千葉県の財政状況について、1997年度から今年度当初予算までの24年間、沼田県政から3代にわたる知事の下での推移を「見える化」したものです。
さて、熊谷知事が就任され、今後の行政運営を進めていかれるにあたり、財政運営の手腕も期待されるところです。かつて知事が千葉市長に就任された当時の危機的な千葉市財政と比較すれば、千葉県の財政の健全化指標は安定的に推移している状況ではあります。
そこで、まず初めに知事にお伺いします。
(1) 県財政の今後の見通しと課題はどうか。
ただいま知事からもご答弁をいただきましたが、お示しした資料のとおり、経常収支比率はこの5年間97%前後で推移しています。新たな政策的事業が行いづらい、硬直状況といえます。また、財政調整基金についても、底をつく状態です。
知事の県政ビジョンである超高齢化時代の医療・福祉の充実、災害に強い県土づくり、経済産業の活性化、次世代を担う子どもたちへの投資、これら様々な政策を実現するためには、財源の確保、財政基盤の強化が必要です。そこでお伺いします。
(2)知事の政策ビジョンを実現させるため、どのように財源を確保していくのか。
県は毎年度の予算編成において経常経費の一律10%削減目標を各部局に求め、新規事業については原則的に削減額に応じて認めています。本来であれば、毎年度一つひとつの事業の効果や必要性を丁寧に検証し、見直す作業が必要です。しかし、総合計画に掲げられている政策についてのみ、評価結果が公表されており、その他の事業についての検証評価については明らかにされていません。そこで、お伺いします。
(3)事業の点検・評価をどのように行っていくのか。
要望
既存事業の総点検については、次期総合計画、合わせて財政健全化計画の策定過程で行っていくとの答弁でした。その際は、庁内だけではなく当事者や関係者を含む第三者の視点が入った形での評価検証、事業仕分け、見える化が必要と考えます。「県民の叡智を結集する」という知事の政治姿勢に基づき、進めていただくよう要望いたします。
2. 新型コロナ感染症対策について
次に、新型コロナ感染症対策についてです。本県においても変異株への置き変わりが急速に進み、感染拡大傾向にあります。第5波を抑え、社会経済活動への影響を最小限にしていくため、最大限の取組みが求められています。特に感染リスクが高い飲食の場面、飲食店に対し、これまで度重なる協力要請が行われてきました。しかし、感染収束が見通せないウィズコロナの今、持続可能な飲食店のあり方を模索しなければなりません。そこで、お伺いします。
(1) 千葉県飲食店感染防止対策認証モデル事業の実施状況と課題はどうか。
今議会の追加補正予算では、千葉市での認証モデル事業を踏まえ、全県展開するための事業に36億3千万円が計上されています。そこで、伺います。
(2) 千葉県飲食店感染防止対策認証事業の実施スケジュールはどうか。
県のモデル認証では、先行の山梨モデルを参考にさらに厳しい基準をとし、59項目中47以上をクリアするよう求めています。今後の全県展開にあたっては科学的根拠に基づく対策、実効性を担保するため、幅広い専門家のご協力を得て進める必要があると考えます。
配布資料をご参照ください。千葉大学予防医学センター、衛生学ご専門の武藤剛医師の監修の下、作成しました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。さて、室内環境の感染リスクを低減させるためには、作業環境管理、作業管理、健康管理の3管理が必要になります。エアロゾル感染によるクラスター事案も多発していることから、適切な換気が行われているかどうか、気流対策は極めて重要です。しかし、室内の気流については目視で確認できず、可視化が難しいものです。
お店のドアや窓が開いていれば、適切に喚起されているとは一概に言えず、店舗の形状、ドアや窓の位置、換気扇の容量や設置箇所等々、様々な要因により、換気の良否、室内気流の流れは一見した感覚とは異なる実態があるそうです。そこで、お伺いします。
(3) 全県対象の認証基準にあたり、室内環境の科学的根拠に基づく感染対策にどのように取組んでいくのか。
ここで松戸市で行われている実証実験、武藤医師らのチームによる事業をご紹介したいと思います。資料3枚目をご覧ください。人が吐いた息、呼気粒子エアロゾルの室内の流れを動態解析ソフトで「見える化」し、人の配置、アクリル板やサーキュレーター等をどのように設置すれば感染暴露のリスクを低減できるかを解析。その後、実地でCO2濃度の測定を行い、室内環境対策をアドバイスするものです。
松戸市では、市内施設でのクラスター発生をきっかけに、エアロゾル対策の必要性に着目していた頃、飲食店側から感染対策をどこまでやればいいのか、客には注意しにくい、どうしたら安全安心に店を開けられるのか、時短協力金で事業継続を支えるのではなくウィズコロナ時代の飲食店の方向性を行政が音頭を取って考えてほしいとの悲痛な声が寄せられていたそうです。そこでマスク飲食を推奨するポスターを作成し、まずは客への注意喚起を呼びかけ、ポスター掲示に協力した店舗の室内環境を実測。飲食店からの要望に後押しされ、福祉政策部局が産業保健の専門家と店舗をマッチングし、モデル事業の実現に至ったとのことです。好事例として、ぜひ参考にしていただきたいと思います。そこで、お伺いします。
(4)全県での認証制度の実施に向けて、市町村や飲食店関係者、研究機関等と連携する必要があるがどうか。
松戸市では6月議会で承認された飲食店対象感染症アドバイザー制度実施に向け、調査店舗を公募しています。8月には現地調査、報告会を開き、その結果を広く公表して同様の店舗の感染対策の参考にしていくとのことです。
科学的な根拠に基づく感染防止策が実現すれば、客も安心して利用することができ、経済活動の両立につながります。今後の全県展開の認証制度を検討に当たり、科学的根拠に基づくデータ、エビデンスの蓄積は重要です。飲食店に対し、酒類提供と時短要請の緩和を模索する上で、また、国における認証制度を求める上でも実証事業は必要だと考えます。今回ご紹介した産官学の連携事例も参考にしていただき、実効性ある県の認証制度につなげていただくよう重ねて要望いたします。
3. スクールソーシャルワーカーの配置について
経済的格差の拡大、ネグレクト等の児童虐待、ヤングケアラーの増加など、福祉的な支援を必要とする子どもたちが増えています。また、コロナ禍で困窮世帯も増えており、より一層教育と福祉の連携が求められています。そして、その要となるのがスクールソーシャルワーカーです。
本県におけるスクールソーシャルワーカーの相談件数は年々増加し、昨年度は1万5千件近くとなっています。そこで、お伺いします。
(1) 令和2年度県全体のスクールソーシャルワーカー一人当たりの受持ち学校数と相談件数の状況はどうか。
千葉県におけるスクールソーシャルワーカー配置は、26年度の7名から始まり、12名、16名、26名、令和元年からは44名まで増員されてきました。しかし、これで教育現場の相談ニーズに十分対応できるのか、疑問です。そこでお伺いします。
(2) 令和2年度の各教育事務所管内のスクールソーシャルワーカー一人当たりの相談件数の最大値はどうか。
私もNPO活動でスクールソーシャルワーカーの方とご一緒する中で、週2日の勤務ではとても対応しきれないとお聞きしています。全国と比較しても不足しているスクールソーシャルワーカーの増員については、これまでの議会でも度々要請してきたところです。
今議会での補正予算案では県内5カ所の教育事務所に各2名、10名の増員が提案されています。一方、県雇用のスクールソーシャルワーカーとは別に、県内の政令中核3市で33名、また7市では17名、合わせて50名が独自に活動しています。しかし、県や市のスクールソーシャルワーカーが一人もいない自治体が4市17町村、合わせて21自治体もあります。そこで、お伺いします。
(3) 市町村における複数配置を進めていく必要があるが、今後の方向性はどうか。
国の方針でもスクールソーシャルワーカーを全中学校区に配置することが示されています。千葉県内では312校区になります。今議会の補正予算ではスクールカウンセラーについては全公立小学校区すべて642校区に配置する予算が計上されています。スクールソーシャルワーカーも同じように全中学校区に配置できるようスピード感を持って進めていただきたいと思います。
また、量的確保と同時に質の確保、専門性の向上もしっかりと行っていく必要があります。特に福祉支援につなぐためには、制度を熟知しているだけではなく子どもや家庭を丸ごと支援するための社会資源とつなげるネットワーク力、行政機関だけではなく地域の民生児童委員、福祉団体、NPO等との顔が見える関係作りが重要です。そこでお伺いします。
(4) スクールソーシャルワーカーの専門性向上や地域での連携ネットワークづくりをどのように進めていくのか。
最後に要望を申しあげます。
県内のスクールソーシャルワーカーを増やしていくためには、市町村の委託事業として進めていくことを検討してください。他県においても、そのような方式をとっている自治体があります。各自治体の事情に応じて、拠点校配置あるいは派遣型にするかを選ぶことができます。
2点目としてスクールソーシャルワーカーは専門職としてのキャリア形成、継続性が求められる職種です。現在、県の雇用契約では週に2日一日7時間45分の勤務、1年契約の会計年度任用職員となっています。勤務時間を増やし、常勤とするなど処遇の改善を求めます。
3点目として、現在、千葉県では配置がゼロとなっているスーパーバイザーの採用を求めます。国の方針では全国で90名という目標が示されています。本県でも困難事例が増える中での専門的な助言を適宜適切に行うことにより、全体的なレベルアップに繋がると考えます。前向きなご検討を期待申しあげ、質問を終わります。