震災ガレキの受け入れ

震災ガレキの広域処理をめぐっては、賛否両論ある。
国は震災直後から全国の自治体に働きかける一方、昨年8月には
災害廃棄物処理特措法を成立させ、広域処理の根拠規定を盛り込んだ。
その後、がれきの受け入れを表明、試験焼却を開始する自治体も現れた。
今年3月に入り、環境省は新聞の全面広告「みんなの力でがれき処理
災害廃棄物の広域処理をすすめよう」を打ち、大々的にアピール。
「みんなの力でがれき処理」プロジェクトも立ち上げた。

しかし、がれきの広域処理については、様々な問題点がある。
そもそも放射性物質を含んだ廃棄物は「移動・拡散・混合・希釈しては
ならない」との国際合意に反する。
また、国内法の廃棄物処理法第2条でも放射性物質を含むものは「除く」と
しているのにもかかわらず、なぜか今は「関知しない」という解釈をとっている。

国は、埋立基準を8000ベクレル/㎏としたが、原子炉等規制法のクリアランス
レベルの100ベクレル/㎏と矛盾したダブルスタンダードである。
これに対し、受け入れを表明した山形県では埋立は2000ベクレル以下、
大阪府では100ベクレル以下など、独自の基準を示している。
また、放射性物質は、焼却炉のバグフィルター等で除去できない。
埋立する管理型処分場では遮水シートの破れ等で汚水が漏えいしている
事例が多くあり、安全な処分場はあり得ない。

3月16日に野田総理大臣と細野環境大臣から出された広域処理の協力要請
に対し、全国各地の情報が新聞等で報道されている。
わが千葉県でも4月6日に次のように回答した。

「本県としては、埋め立て処分場が確保されることや放射能などの安全性に
関し十分な説明がなされることなどの課題の解決を前提に、前向きに協力
していきたいと考えております。」

千葉市、四街道市に加え、市原市も協力の意向を示したと今朝の新聞報道に
あった。
昨日(10日)、担当課に聞き取りしたが、市町村で引き続き検討中で、
情報は流動的なので把握できていないとのこと。
取りあえず、国からの要請文を入手した。

それによると、岩手県の広域処理希望量は、可燃物2.9万トン、
不燃物7.3万トン、木くず47.1万千トンで合計57.3万トン。
放射能濃度の最大値は、可燃物で39.6ベクレル、不燃物は35ベクレル
木くずは135ベクレル/㎏とのこと。

これに対し、宮城県は、可燃物131.6万トン、不燃物139万トン、
木くず73.4万トンで合計344万トン。
放射能濃度の最大値は、可燃物で最大171ベクレル、不燃物(細じんで
930、その他で240ベクレル)、木くずで340ベクレル/㎏となっている。
石巻ブロック(石巻市、東松島市、女川市)からの量がほとんどを占めていた。

これら災害廃棄物を受け入れる施設として、一般廃棄物処理施設に加え、
民間事業者が所有する廃棄物処理施設、セメント工場、バイオマス発電所等
が該当するとなっており、必要経費も含めて「国が全面的に支援する」とのこと。
陸前高田市では国に対し、地元で焼却処理するための施設建設への協力を
求めたが、叶わなかったとの新聞報道もあった。
廃棄物処理法の自区内処理の原則にも適い、地元雇用を生み出す陸前高田市
の提案を無視し、広域処理に走るとは何ごとだろうか?
国がやるべきことは被災地の意向に耳を傾け、「全面的に支援する」ことでは
ないのか?

ガレキの広域処理には巨大利権が絡んでいるとの見方も濃厚だ。
被災地の真の復興のために、正しく税金を使うべきだ。
今後とも、県内市町村の動向を含め、注視していきたい。