千葉大学医学部へ
8月21日(水)
乳児院エンジェルホームを後にし、いったん県庁に戻る。
午後からは、会派メンバーで千葉大付属病院に向かう。
地域医療、とりわけプライマリーケアーを支える家庭医・総合医の果たす
役割やその育成をテーマに、昨年は札幌にある北海道家庭医療学センター、
つい先日は長野の諏訪中央病院や佐久総合病院を訪ねてきた。
後先が逆になった感もあるが、今回は千葉県の医療を支える最重要拠点
でもあり、最先端を走る研究拠点でもある千葉大医学部ドクターの先生方
からご教示いただくため、お忙しいところ何とかお時間をつくっていただいた。
当日は、副医学部長・総合医療教育研修センター長の田邊政裕ドクターと
総合診療部教授の生坂政臣ドクターが対応してくださり、千葉大の
取り組み状況を伺った。
左が田邊先生、右が生坂先生
折しも、厚労省は今年の春、「総合診療専門医」の導入を決定した。
従来からある内科や外科など18ある「基本領域専門医」に新たに追加し、
19領域となる。
これは日本の医療の新たな幕開けとも言われ、多くの困難に直面する現行
の医療を根底から変える「大転換」ともいわれている。
2017年から後期研修が始まり、2020年には新制度のもとで
初の「総合診療専門医」が誕生する。
総合診療専門医制度の創設を受けての千葉大の取り組み状況を伺うと、
生坂先生がとても嬉しそうにこれまでの経緯を語ってくださった。
先生ご自身は神経内科を専門とした後、アメリカで米国家庭医療学
認定専門医となり、現在は千葉大の総合診療部で後進の指導にも
熱心に当られている。
これまで家庭医療学や総合診療学といわれるプライマリーケアの分野は
臓器別に分かれた専門分野から一段低く見られ、その重要性についての
共通認識はあっても、医者や患者も臓器別志向が強かったとのこと。
また、医師会の反対もあって総合診療医の創設が阻まれてきた経緯がある。
しかし、医師不足・医師偏在、超高齢化社会への対応という喫緊の課題を
無視できなくなり、患者中心の全人的医療、プライマリーケアを支える
家庭医・総合診療医の人材育成にようやく光が当てられた。
千葉大では、医学部卒業後の初期研修に集まる人数が9年前の60人から
今年は20人に減少し、そのうち千葉大医学部卒は9人にとどまった。
魅力ある研修プログラムを用意しなければ人材流出し、残ってもらえない
と危機感を強め、田邊先生が中心となり、国の「総合診療専門医」導入と
連動し、新たなチャレンジに打って出た。
文科省が2013年度予算に盛り込んだ新規事業「未来医療研究人材養成
拠点形成事業」(総額22.5億円)に手を挙げ、厳しい競争のなか、
採択されたとのこと。
全国から60申請が出され、そのうち15申請が選定、20大学が対象と
なるそうだ。
今年10月から新たなプロジェクト「超高齢社会に対応する総合診療医
養成事業」が始動する。
財源は文科省の予算が向う5年間、年間7千万円入り、拠点建設や
指導医の雇用などに使われる。
この他に千葉大では新しい外来病棟の建設も進められている。
新病棟では総合診療科をいまの3ブースから12ブースに拡張する予定
とのことで、千葉大でのプライマリーケアの前進が大いに期待され、
喜ばしい限りだ。
とはいっても、まだまだこの分野の人材育成は緒についたばかりで
全国にはプライマリー学会の認定医が1600人、家庭医療学専門医は
380人、総合内科医は15000人とまだまだ少ない。
しかし、嬉しいことにドクターの卵である研修医のプライマリーケアへの
関心は最近、確実に高まっているそうだ。
この志をしっかりと受け止め、社会的にしっかりと支援するしくみを
つくっていかなければならない。
NPO法人千葉医師研修支援ネットワークの高岡和美事務局長からも
医師確保や医師のキャリア形成支援など、千葉県が行っているさまざまな
事業について、説明をいただいた。
千葉県の医療資源はワースト順位から脱却できないが、ドクター養成には
少なくても9から10年かかることを再認識した。
本県でもこれからの地道かつ戦略的な取り組みが功を奏するよう
ますます力を入れていきたいものだ。
レクチャー終了後、センター内を案内していただく。
研修のための人体模型があちらこちらに
医学部在学中にこちらのセンターでしっかりと研修を積み、評価を受け、
試験をパスしなければ、実際の患者さんを診ることはできない。
厳しいトレーニングを経て、ようやく一人前の医師が誕生することが
実感できた。
千葉県としても医師だけでなく看護師や保健師、介護職など、
プライマリーケアを支える人材育成や環境整備により一層力を
入れていく必要がある。
田邊先生、生坂先生はじめ、お忙しいところご教示いただき、
本当にありがとうございました。