令和3年6月議会 会派代表質問(入江担当箇所原稿及び答弁要旨)
目次
2021年6月23日(水)
会派「立憲民主・千葉民主の会」代表質問(入江担当箇所原稿及び答弁要旨)
1.知事の政治姿勢について
2.新型コロナウイルス感染症対策について
3.水政策について
なお、質疑要旨は正式な議事録ではありません。
1. 知事の政治姿勢「県立病院のあり方検討」について
熊谷知事の県政ビジョン6「人口減少・高齢化が進む地域の医療提供体制の充実」を掲げておられます。この重要課題に照らし、県が地域医療から手を引くことが前提となっている保健医療計画の見直し、県立病院の将来像についての議論は避けられません。
県立病院は6年連続の赤字収支、今年3月には37億円の長期借入(10年後に満期償還)を行うほど経営悪化が深刻です。かつては、主力のがんセンターが赤字をカバーしてきましたが、医療事故の影響、診療報酬改定や外部の医療環境の変化等でその手法が取れなくなっています。
この間、病院局は実効性のない「経営改革プラン」の下、収益確保のための改革を行わず、その結果、内部留保資金を使い果たしました。現在、病院局では今秋を目途に次期「経営改革プラン」の策定作業を進めていますが、ようやく「原価計算システム」を導入する段階です。計画が終了する4年後の病院の姿は不透明であり、このままでは6病院の運営は極めて厳しいと言わざるを得ません。
今後、県立病院の役割を果たしていくためにも、収益向上に向けての構造改革、具体的には適正病床数の再確認、診療科の再編成、医師確保と最適配置、事務局機能の強化等々について、抜本的な取組みが必要です。当然、これは県立病院単体の検討では困難であり、地域医療における他の医療機関との連携・ネットワーク化も視野に進めていく必要があります。
特に地域医療を担う佐原病院や循環器病センターが抱える地域では、超高齢化や急速な人口減少が進み、患者の疾病構造も変化しています。医療資源が乏しい地域で中核的な役割を果たしていますが、医師不足や不採算部門による赤字幅の増加、集患能力の低下、施設の老朽化等々、多くの課題を抱えています。
「目の前のコロナ対応で医療現場はそれどころではない」といった声も聞かれますが、2年後の保健医療計画改定のタイミングに向けて、「県立病院のあり方検討」は喫緊の課題と考えます。県立病院の経営改善、構造改革を進める上でも早急に着手すべきです。そこで、お伺いします。
「県立病院のあり方検討」について、知事の課題認識と今後の対応はどうか。
要望
病院局は運営資金がショート、自前で回せなくなっており、問題を先送りしている余裕はないと思われます。地域住民の命と健康を守る病院は、経営破綻させられません。県立病院の経営健全化・持続可能な病院運営に向けて、熊谷知事の「徹底した現場主義と対話」による迅速で的確なご対応を強く要望します。
2.新型コロナウイルス感染症対策 医療提供体制について
本県でも新型コロナ感染の第4波は収束せず、直近7日間平均(6/20時点)の感染状況については、新規感染者数が100名を超えてやや増加傾向、入院患者の病床使用率は全体で26%前後、重症病床は20%弱とほぼ横ばいに推移しています。
一方、4月上旬の感染爆発に見舞われた大阪府では重症患者が400名を超え、医療体制がドミノ倒しで崩壊、死亡者が激増するという最悪の事態に陥りました。現在はやや落ち着いてきていますが、この事例の検証を今後の医療提供体制に生かしていかなければなりません。千葉県では、先月5月28日新たな病床確保計画を策定し、今月7日からフェーズ2で運用開始しています。感染者急増時の緊急対応を想定したフェーズ4では病床を1,370床、うち重症病床は120床を確保するものですが、一般医療は大幅に抑制されます。そこで、お伺いします。
(1)大阪府での第4波の医療ひっ迫の事例をどのように分析し、今後の病床確保に生かしていくのか。
本県でも第4波における変異株の割合が増加しています。変異株は重症化のスピードが速い、いったん重症化したら治るのに非常に時間がかかる、若い世代への感染拡大傾向があるなど、より一層の危機感を持って対応する必要があります。大阪府では重症病床に入れない患者が軽症・中等症病床に滞留し、その治療に4倍の看護師が必要になることから人手が取られ、本来の運用ができず2割のベッドが空いた状況だったということです。そこで、お伺いします。
(2)重症病床の確保については、今後さらに進めていく必要があると考えるがどうか。
さらに、大阪府では4月末時点での感染者の入院率は全国最低の10.5%まで低下し、自宅療養者は最大で1万8千人を超えました。3/1~5/28までに、自宅療養中、宿泊待機中、入院調整中に急変し死亡した方が19名。第1波、2波での急変死亡者はゼロ、第3波では1名と比べると明らかな急増です。急死した方の大半にはパルスオキシメーターが配布され、保健所からの能動的な健康観察を受けていたということですから、不安感は拭えません。
千葉県の新たな病床確保計画では新たに自宅療養者数が盛り込まれ、フェーズ2では700人、フェーズ3では2,600人、フェーズ4では5,300人となっています。そこで、お伺いします。
(3)新たな病床確保計画のフェーズ3・4における大幅な自宅療養者数の引上げ対し、どのような体制強化を図るのか。
再質問
重症病床のさらなる確保にあたっては、ECMOや人工呼吸器等の設備整備や施設整備への補助を新たに行っていくとのことでした。そのための予算が5月20日に専決処分されており、迅速な対応に感謝いたします。その一方、長引くコロナ対応で負担が集中している医療現場では、働く方々の心身に疲弊が生じているとも聞いています。これまで県はコロナ患者を受入れる医療機関への協力金を独自で行っていますが、医療従事者に直接支給される手当はありません。そこで、お伺いします。
コロナ医療従事者に対する県独自の支援策を講じてほしいがどうか。
自宅療養者に対する医療体制の充実について、再質問します。外来や往診等の医療支援については県医師会と連携し、協力していただける医療機関を増やしていくとのことでしたが、 夜間・休日における救急受入れ体制についてはどのような整備状況なのか、お聞きします。
3. 水政策 霞ケ浦導水からの撤退、未利用水利権の転用、県環境保全条例の見直しと暫定井戸の継続利用について
高度経済成長期に首都圏で水が不足するとして計画されたダム建設は、今や必要性が失われています。人口減少・節水技術の発展や産業構造の変化により、水需要は頭打ちになり、ダム事業は計画変更を繰り返し、撤退を判断する利水参画者も見られるようになりました。
千葉県では、平成20年度に長期水需給予測を見直し、12年後の昨年度の一日最大給水量238万立方メートルとする右肩上がりの予測を立てました。議長のお許しを得て関連資料を机上配布しました。県全体の水道の水需要予測と実績について、その乖離は一目瞭然です。
また、千葉県内の水道事業体の給水量と保有水源の推移のグラフでは、十分な保有水源を確保できていることが見て取れるかと思います。しかしながら、千葉県内では、今なお新規水利権を得るために、霞ケ浦導水事業や思川開発事業に参画しています。
昨年12月、国交省は霞ケ浦導水事業の工期を令和5年度から令和12年度に7年延長、事業費を1900億円から2395億円に増額する計画変更をしました。この変更では、埼玉県水道と九十九里地域水道企業団は撤退、千葉県工業用水道と印旛広域水道は参画水量を減らしています。
埼玉県は撤退理由について、「霞ケ浦の水利権は今後使用しない可能性が高い。参画を継続すれば施設完成後から永続的に発生する維持管理費や施設更新費等の負担が生じるため、これ以上の参画継続は県民に不要な負担となり、理解を得ることは極めて困難である」としています。
10年前に遡れば、当時千葉市長だった熊谷知事も霞ケ浦導水からの千葉市水道の撤退を英断されています。その時よりも水余りは顕著となっています。その一方で、県内では過大な水需要予測に基づき、ダム建設に多額の負担金を支出したにもかかわらず、未だに使われていない未利用水利権が多くあります。そこで、お伺いします。
(1)新たな長期水需給調査に向けて、今後県はどのように取組んでいくのか。
(2)今後の事業体の霞ケ浦導水からの撤退、未利用水利権の転用や返上について、県としてどのように対応していくのか。
特に、私の地元・四街道市や佐倉市を含む印旛地域では、霞ケ浦導水による水道事業への経営圧迫は必至です。昨年4月からは八ッ場ダム供用開始に伴い、すでに水道水源である地下水が減らされ、利根川の水に切り替えられています。今後、霞ケ浦導水完成時には、県企業局柏井浄水場からの用水供給量が増え、安くて美味しい地下水から高い河川水へのさらなる転換を余儀なくされます。当然、各市町における水道料金は跳ね上がり、住民生活に大きな影響を与えます。
安全で美味しい地下水を飲み続けたいという住民の声を受け、平成29年2月、9市町の首長が県に「暫定井戸の継続利用と千葉県環境保全条例の見直しに係る要望書」を提出しています。県条例によりダム完成と引き換えに廃止されてしまう暫定井戸については、渇水対策や災害時の危機管理の観点からも、地下水の保全や水循環の健全化の観点からも継続的利用が必要です。
また、地盤沈下を理由に地下水の汲み上げを規制している県環境保全条例についても、制定後40年以上経過しています。これまでの地盤沈下のモニタリング解析結果の詳細な検証を深め、地下水の継続利用に向けてのルールの見直しを求めます。限られた水資源をいかに有効に活用するか、持続可能な水政策への転換について、新しい知事のリーダーシップで模索していただきたいと思います。そこで、お伺いします。
(3)県環境保全条例の見直しと暫定井戸の継続利用について、知事のご見解と今後の対応はどうか。
要望1
霞ヶ浦導水については、いつ完成するかも不透明であり、現在参画している県内利水者の総負担見込み額は103億円、これに加え、完成後の維持管理費の見込みもまったく示されていません。地方自治法2条14項「最少の経費で最大の効果を挙げる」、この経済性の観点がないがしろにされれば、借金は膨らみ続け、この先の社会資本の維持管理の財源すら生み出せません。次世代への負荷を最小限するための合理的判断こそ、新知事に求められていると思います。
要望2
印旛郡市広域市町村圏事務組合では、3年前から末端給水事業の広域化について検討が進められてきました。先月13日にはその検討結果が取りまとめられ、9団体の事業統合を目指すためには新たな投資と長い年月を要するとの一定の結論が出たところです。財政シミュレーションでは、団体間の経営状況や施設・管路の更新状況に格差が生じていることが分かりました。
四街道市をはじめ、各自治体では八ッ場ダムや霞ケ浦導水からの河川水の受入や新たな施設整備を余儀なくされ、水道事業の経営は厳しさが増しています。
知事におかれましては、持続可能な水道事業に向けて、自治体に寄りそった対応を重ねてお願いいたします。