鋸南町 汚染土壌処理施設操業差し止めの仮処分
7月23日(土)
今週は、市内各駅で市議会・県議会報告を早朝配布。
その後は市民ネットの各種会議等が立て込み、あっという間の1週間でした。
雨による中止もあり、週明けの25日、26日まで各駅をお邪魔します。
21日(木)
午後、鋸南町での汚染土壌処理施設操業差し止めを求めて
闘ってきた住民の方から電話があり、
「千葉地裁木更津支部で操業差し止めを命じる決定が出た!」と
嬉しいニュースが届きました。
翌日22日の新聞にも報じられ、その日の夜に地元住民の方から
95ページに及ぶ当該決定文がPDFファイルで送られてきました。
便利な世の中になったものです。
翌朝、早起きして一気に読み終えました。
木更津支部の齋藤憲次裁判長、小口五大裁判官、倉片ユリ裁判官の
事実認定に感謝します。
八ッ場ダム裁判をはじめ、多くの裁判を見てきたなかで
司法に課せられた三権分立の立場、当たり前であるはずの客観的かつ
中立・公正の視点が欠如した「絶望の裁判所」を見てきただけに
救われる思いです。
今回は住民(債権者)と鋸南開発㈱(債務者)の民事裁判の結果ですが
千葉県を相手に現在進行している行政訴訟にも大きな影響を与えて
ほしいと願わずにはいられません。
自分への忘備録の意味も込め、本裁判の争点に対する裁判所の見解を
急ぎ抜き書きしてみました。
長文になりますが、皆さんにもご一読いただければ幸いです。
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争点1
本件施設外に有害物質が漏出し、佐久間川、東京湾、地下水が汚染され、
債権者らに損害が発生する可能性について
(1) 埋め立て土壌の安全性
・不溶化処理後の安全性の持続性の保証はなく、不溶化処理されていない
土壌の持ち込み可能性あり。
・自然由来ではない汚染土壌の持ち込みの可能性あり、受け入れ基準を
満たさない土壌、汚染濃度が高い土壌が持ち込まれる可能性あり
★債務者(鋸南開発㈱)は、長年にわたって採石法違反、潜脱を繰り返して
きた債務者が契約前後の審査を適切に行えるか疑問である。
(2) 遮水工の安全性
・破損した個所から有害物質が地下に流れ出す可能性あり。
遮水シートと不織布の寿命はいずれも10年前後だが、すでに
不織布の劣化や破損が見られる。
・債務者は「遮水シートの接合に不具合はない。合格判定が出た」とするが、
判定したのは本体施設の元受会社の判定なので、信用できない。
・本施設に漏水検知システムの設置なし
・施設本体の地盤ではボーリング調査を1本も行っていない
ボーリング自体も少なく位置も偏っている。不透水層であるとは
信じがたい。 本地盤は割れ目が多く軟質。
★債務者は147万㎥もの汚染土壌の重量に耐えられるか、検討していない。
(3) 浸出水の処理が適当か
・第二種特定有害物質(経口摂取による健康被害が発生)を除去する
施設がないので、同物質に汚染されている可能性のある浸出水が
そのまま佐久間川に放流される。
★汚染土壌対策法22条3項、汚染土壌処理業に関する省令4条1号トに
おいては、排水口における排出水の水質を排水基準に適合させるために
必要な処理整備を設置しなければならないと規定されており、
本件施設は上記法令に反する。
・第二種特定有害物質は1か月に1回しか検査されないから
排水基準を超える濃度のものが排出されても、発見されずに
垂れ流しになる危険性が大きい。佐久間川が汚染される可能性がある。
(4) 債務者が本件施設を適切に管理できる能勢と経理的基礎を有するか
・債務者は本件事業の工事全般、常駐管理、環境モニタリング、行政対応
全般をケミカルグラウトに丸投げ状態で任せる予定。
★土壌対策法22条7項汚染土壌処理の再委託に違反する。
・委託した業務内容の監督態勢が明らかではない。債務者が責任をもって
履行させうるのか確実性がない。債務者の管理体制が十分とは言い難い。
★ケミカルグラウトへの委託期間はH31年12月31日までとなっており、
埋め立て期間経過後の維持管理の担保なし
★本件施設を適切に維持管理するために多額の資金を要するが、
債務者に経理的基礎がない。
★本件施設の土地には多数の根抵当が設定され、多額の借入金が
いまだに残存すると思われ、十分な資産があるとは言い難い。
25年1月に突如、本件施設を計画したのは、資金難により採石後の穴を
埋め戻すことができなくなったことに起因する。
★本件施設を維持管理し、有害物質が流失した際の除去コスト等を考えると、
利益がわずか1000万円程度では明らかに経理的基礎を欠いている。
(5) 債権者らの井戸の水源
★債務者は環境地質コンサルタント「上砂意見書」の些末な誤記や
説明不足あげつらうことに終始しており、推論過程に対する本質的な
批判がなく、反論として意味を持たない。
(6) 債権者らの権利が侵害され、損害が発生する可能性
★人は、人格権としての身体県の一環として、生存・健康を損なうことのない
水を確保する権利を有し、この様な権利が侵害されるおそれがある場合
には、侵害の原因となる行為の差し止めを請求することができる。
・本件施設外に漏出した有害物質は地下水を汚染し、井戸水が汚染される
可能性がある。生命、身体に損害が発生する可能性がある。
・汚染物質が流れ込む可能性のある佐久間川河口で操業する勝山漁協の
漁業権と漁業権の行使が侵害される可能性がある。
★施設の操業により債権者の健康を害する、人格権が侵害される恐れがある。
争点2
汚染土壌飛散により大気や土壌が汚染され、債権者らに損害が発生する
可能性について
・汚染土壌を飛散又は落下させるおそれがあるとは直ちには認めがたい。
・汚染土壌の飛散による健康被害の発生までは認められない。
争点3
汚染土壌を搬入する車両による交通事故、排気ガス、振動、騒音等により
債権者に損害が発生する可能性について
・債権者らの生命、身体、財産への損害が生じるほどに交通事故と
排気ガス量が増加し、積載した汚染土壌の飛散が生じることを認めるに
足る証拠はない。
争点4
災害時に有害物質が本件施設外に漏出し、債権者らに損害が発生する
可能性について
・債権者らの主張を認めるに足りる証拠破損しないので、採用できない。
争点5
観光業など自然を資本とする地域産業への打撃により債権者らに
損害が発生する可能性について
・債権者らの利益に関する主張は抽象的なものにとどまり、
何ら具体的な主張はないため、採用できない。
争点6 差し止めの必要性について
・本件施設を操業することにより、債権者(認められたのは18人)の権利が
侵害された場合に損害を賠償するに十分な資力を有しているとは
認められない。
★被害が発生した場合、損なわれる利益は、何にも代え難い人の
生命、身体であり、その利益の重大性に鑑みると被害を発生させない
必要性は高い。
従って、本件施設の操業を差し止める必要性があるといえる。
【結論】
債権者(認められた18人)の申し立ては理由があるからこれを認容し、
その余の債権者等の申し立ては理由がないから却下することとして、
主文のとおり決定する。
平成28年7月20日
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これらの争点については、私たち会派メンバーが県議会本会議や
環境生活部、商工労働部の各常任委員会で問題提起し、
追及してきた内容です。
↓
2015年6月26日環境生活警察常任委員会
千葉県は今般の木更津支部での決定を重く受け止め、現在審査中の
鋸南開発による汚染土壌処理業の不許可決定を早急に決断すべきです。
鋸南町の町長はじめ、住民の方々をこれ以上苦しめないでください。