生活保護バッシングの行方は

8月19日(日)

巷のお盆休みも今日が最終日。
今年は9連休の人も多かったようです。
私は、予算要望その他もろもろの話し合いや会議、情報紙や外部機関紙の
原稿書き、頼まれごとで結構忙しく、残念ながら里帰りはできませんでした。
とはいえ、忙中閑あり。
友人と出かけてリフレッシュしました。

今日の午後は、市民ネット千葉県主催で生活保護の学習会(船橋市民会館)
講師は、NPO法人自立生活サポートセンター・もやいの代表理事の
稲葉剛さんです。

今年5月、お笑い芸人の母親の生活保護受給が週刊誌に取り上げられ、
テレビ等マスコミが大々的に報じました。
その後、片山さつき自民党議員などが騒ぎ出し、「不正受給」ではない
にも拘らず、当の芸人が謝罪会見をする顛末となりました。
この事件をきっかけに、扶養義務の強化を主張する声が高まってきて
います。
その上、小宮山厚労大臣までが「扶養義務者が扶養できない場合は
扶養できないという証明を出してもらう」と国会で発言しています。

しかし、稲葉さんによると、このことは60年前に時計の針を逆戻り
させる間違った法解釈で本来ありえないということ。
というのは、生活保護法は1946年に制定されたが、その4年後に改正
された1950年の新法では、旧法にあった「扶養義務を果たせる親族が
存在する場合は保護を受けられない」という欠格条項がなくなりました。
それなのに、ここにきて扶養義務を強化する狙いは、年々増加の一途
をたどる生活保護の受給率を少なくしようとの新たな「水際作戦」か?

90年代からホームレスが増加し、初めは中年の男性が中心だったが、
2005年以降は20~30代の若者が増え、2008年9月のリーマンショック
以降、「もやい」での相談件数も3倍に膨れ上がったとのこと。
現在も年間900世帯近くが来所し、その3割程度が30代以下だそうです。
特に昨年の震災後は、年齢の幅も18才から82才と広がり、女性や家族
での来所が増えてきているとのことです。

2007年の社会保障実態調査によると、
「過去1年間に家族が必要とする食料が変えなかったことがある」のは、
よくあった2.5%、ときどき4.5%、まれに8.6%を合わせて15.6%

生活保護を打ち切られたことによる餓死孤立死も各地で起こり、
貧困のステージは次の段階に入ってきたと稲葉さん。

生活保護は憲法25条に明記された生存権、健康で文化的な最低生活を
保障するための制度であるにもかかわらず、そのことが社会的に広く
理解されていないのが現状です。
稲葉さんのお話の後、生活保護を受給しているMさんがこれまでの
心境や制度への思いを語って下さいました。

精神疾患のため、仕事を辞めざるをえなくなり、生活保護を申請。
初めは生活保護を受給していることを隠してきましたが、
それだけ周囲からの差別や偏見が強かったということ。
負い目を感じながらの生活は、二重に苦しかったと思います。
「もやい」の戸を叩くことで家族に代わる居場所ができ、
共感してくれる仲間とのつながりが、前向きに生きる力、エネルギー
を与えてくれたと話してくれました。
昨年8月からスタートしたデモには、刺繍を施した手作りの横断幕を
掲げて参加したと実物を見せてもらいました。
「自分らしく生きるための生活保護を守ろう」
「守る 伝える 生活保護 本当の意味を」
ひと針ひと針思いを込めて、仕上げたそうです。

平均所得が低下し、6~7人に1人の子どもが貧困という日本社会。
雇用破壊、DⅤ被害や児童虐待、貧困の世代連鎖など、さまざまな
課題が山積しています。
人が人らしく生きる「権利」としてのセーフティネットをどうつくるか、
自分が与えられた持ち場で何ができるか、まずは現状を調査把握し、
改善や新たな政策提案に向けて取り組んでいきたいと思います。

ご参考まで、下記の情報もご覧ください。

「自立生活サポートセンター・もやい」はこちらから↓
http://www.moyai.net/?tmid=30
*日弁連が生活保護Q&Aパンフレットを発行した情報も掲載されています。