八ッ場ダム 東京裁判

6月6日(水)

東京高裁での東京裁判が101号大法廷で午後3時から行われた。
法廷を使っての初の口頭弁論ということもあり、傍聴席はほぼ満席。
被控訴人側の橋本弁護士は引き続きだが、都側の職員はガラッと顔ぶれが
変わっていた。

今回は原告側から、治水上不要という争点に関して「証人申請」を求める
ための意見陳述が行われた。
証人として、関東地方整備局河川部長の山田邦博氏、新潟大学の大熊孝氏、
東大大学院工学系研究科の小池俊雄氏、拓殖大学の関良基氏を裁判所に
採用してもらい、証人尋問をするためである。
トップバッターは、原告側弁護団長であり、治水のエキスパートの域に
達しつつある高橋弁護士。
これまでいかに国交省が偽装ともいえるでたらめなデータで市民に加え、
裁判所をも欺いていること。
八ッ場ダムが必要という結論に導くために、過大な洪水流量22,000t
をつくりあげてきたか。
また、第三者機関としての学術会議での検証がデータに基づかず、
単にお墨付きを与える場でしかなかったこと、等々。
30分にわたって、時には怒りに震えながらも熱弁をふるい、裁判官に
訴えかけた。

二番バッターは、可愛らしいなかに凛とした印象のある西島泉弁護士。
短い持ち時間の中で、東京都が472億円の負担金を出し、さらなる水源を
得ることは過大投資で違法であると最新データに基づいて説明し、
地方公営企業としてのあるべき姿、つまり経済合理性の観点からも
外れていると訴えた。

この後、裁判長から「合議しますので、しばらくお待ちください」との一言が
あり、暫時休憩。
3人の裁判官がいったん法廷を出て相談し、ほどなく法廷に戻られた。
「関氏と大熊氏の証人を採用します。その他の証人申請については、
保留します。」とのこと。

次回の期日である8月7日(火)午後1時~5時に、証人尋問が行われること
になった。
同時に求めていた「裁判への国交大臣参加申立て」については、原告と被告
双方の意見書提出を踏まえ、判断するとのこと。

裁判を終え、弁護士会館で原告や傍聴者との意見交換。
八ッ場ダム裁判

前方左側が、高橋弁護団長。ちょっとお疲れのご様子。
その右隣が、西島弁護士。
「今日の時点で証人採用があるとは思わなかった」
「今後は国が参加手続きに入るかどうかが焦点となり、それによって証人採用
が決まってくる」
弁護団の重鎮大川弁護士からも分かりやすく解説があった。

都側の弁護士がしきりに「住民訴訟は財務会計行為が争点でこれはダム
差し止め裁判ではない」と強調していたが、治水についても河川法33条に
ある県民にとって「著しい利益」がなければ、違法な税支出となるはずだ。
治水面の必要性については、関係都県は独自の判断基準を示さず、
国から請求された負担金を支払っている。

また、関東地方整備局が5月25日にパブコメを発表した。
「利根川の治水安全度と目標流量」についての意見を募集するというものだが、
これまた巧妙なやり方で八ッ場ダム推進に利用しようとする意図がアリアリと
見て取れる。
治水上、ダムが万全の対応策でないことが明らかになった今、
国交省は現実に即して国民の命と財産を洪水から守る治水対策を
真剣に考えてほしい。
脆弱な堤防の強化やゲリラ豪雨による内水氾濫対策など、急ぎやるべきこと
にもっと目を向けるべきではないか。